奥湯河原に隠れるように立つ
2室だけの大人の宿でくつろぐ

リピーターが驚くほど多い理由は食事にあり？

こちらがもうひとつのタイプ、和洋室の淙。清流が淙々と流れる様子から、名付けられた。この部屋の定員は2名。淙と椛のどちらにも内風呂が備わる。両室とも、夕食、朝食は部屋でいただく。

 用意される2室は、和洋室の淙(そう)と、和室の椛(もみじ)。どちらの部屋も露天風呂を備える。真下を清流が流れる露天風呂に浸かっていると、周囲の自然と一体化したかのような、不思議な感覚を味わう。肌に優しいやわらかい泉質であることも、そうした印象の理由のひとつだ。

 風呂でリフレッシュした後は、読みかけの本を開いてもいいし、ぼーっと外の景色を眺めてもいい。あるいは、部屋に備え付けのワインセラーから好みの一本を選ぶのも楽しい。入手困難なものも揃っているのでワイン好きにはたまらない。

先付けと焼き物、スープとご飯。野菜は、主に伊東の契約農場から。

 リラックスしていると、夕食の時間だと告げられる。素材を吟味して、丁寧に調理したことが伝わる味だから、何度食べても飽きない。そう感じた瞬間、リピーターが驚くほど多いという事実がすとんと腑に落ちた。

左：海の幸は、駿河湾や相模湾などで水揚げされるものが主で、季節によって、それぞれの旬の味が提供される。この日のお造りは、サヨリの木の葉造り、伊勢エビ、平貝のレモン〆など。
右：朝食に供された、金目鯛の開き。目の前で備長炭の火で炙られ、じゅわっと脂が焦げる匂いに食欲をそそられる。

撮影＝柏田芳敬
文＝サトータケシ