「どうしていつも能面みたいに同じ顔をしているんですか?」という質問に……

 もうひとつ、ちょっと聞きづらいことを聞いてみた。「表情が変わらない印象がありますが、意識されてますか?」。すると「そうですか?」と、少し悲しげな表情。石破さんは防衛大臣、農林水産大臣、自民党政調会長などの大役を歴任。しかもいつも厳しい時期にまかされてきた。そんなときは小さな失敗も許されない。「間違ったことは言ってはいけない、感情の起伏を表に出してはいけない、つねに理路整然と答える。そうでなければこの商売はもたないんだよ。それだけの話です」ときっぱり。

露天風呂に入れない

 聞いていると、とにかく忙しそうで、ちょっとかわいそうになってきた。自由のなさはアイドル並だ。車の運転もできないし、あとSPが守れないという理由で露天風呂も絶対ダメだとか。その後、ドラマ「半沢直樹」の話になり、元銀行員ということでつい「見てるんですか?」とたずねたら「見てるわけねえじゃん!」と即答(笑)。ついでに「あまちゃんは?」と続けたら「見てない。もう終わったんでしょ? 週刊誌に載ってた」。「週刊誌は読んでるんですね」と返したら、「読んでるわけねえじゃん!」と言っていた(笑)。すました感じと、おじさんっぽいときがあって安心した。

 20分のはずが、結果的に45分くらい話していただいた。いつか石破さんが露天風呂に入れる日が来ることを願いつつ、失礼しました。

なかむらるみ

1980年、東京都新宿区生まれ。イラストレーター。一児の母。武蔵野美術大学造形学部デザイン情報学科卒。著書に『おじさん図鑑』(小学館)、『おじさん追跡日記』(文藝春秋)、「月刊たくさんのふしぎ」2024年3月号『かっこいいピンクをさがしに』(福音館書店)、イラストを担当する連載に、東京新聞Web「ぐるり東京 泉麻人 町喫茶さんぽ」、きもの雑誌「七緒」の「田中敦子 染め織りぺディア」がある。趣味は旅行先で絵日記をかくこと。好きな食べ物はお寿司とコーヒー。ホームページ:https://www.nakamurarumi.com/

『おじさん追跡日記』

『おじさん図鑑』の著者が、今度は一緒に飲みに行ったり、仕事場を訪れたり、おじさんのもつ魅力により深く迫ります。
「おじさんの言動やしぐさは、面白くもあるしときには本質を突いていて、ためになることもある。なるべくそのままの雰囲気が伝わるように書いたので、なかにはちょっと変なところもあるけれど、その変さには “おじさんの個性” が詰まっている気がするので、ぜひ変なまま味わってほしい。ではどうぞお楽しみください」(「はじめに」より)

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2024.11.03(日)
文・絵=なかむらるみ