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キュアプリズムと似ているところ

――三度目の正直でプリキュアとして参加が決まった時は、どのようなお気持ちでしたか。

加隈 憧れがまたひとつ叶えられたといううれしさと同時に、あんなにもみなさんに愛されたラビリンと違うキャラクターでプリキュアに参加してもいいのかな……という悩みも湧いてきました。

 でも、キュアプリズム/虹ヶ丘ましろという、自分に似ているところもすごくある魅力的なキャラクターの役をいただき、精一杯がんばろうと思いました。

――どんなところがご自身と似ていると思いますか? キャラクターの魅力も教えてください。

加隈 似ていると思ったのは、庶民的なところです。ましろが変身するキュアプリズムは、あたたかくて優しいけれど、キラキラ華やかなお姫様ではなく、どこか身近にいるような親しみやすさがあります。しかも冷静にまわりを見ることができるバランスのよさも持っています。それなのに自己肯定感が低く、「自分なんかに何ができるんだろう」と悩んだり、くよくよしたりするんです。

 たとえば何かに挑戦する時、キュアスカイのソラちゃんは、「やってみましょう!」って言うんですけど、ましろは「大丈夫かな」がまず口に出ちゃうんです。「失敗したらどうしよう」ということをまず考えちゃう。そんな、「完璧なヒーロー」ではなく、悩みながら、間違いながら、それでも前に進んでいくましろは、すごく自分に似ているな、と思います。

――ましろやキュアプリズムから、加隈さんが勇気やパワーをもらっている部分はありますか?

加隈 ありますよ〜。ましろはキュアプリズムになっても、悩みながら一歩ずつ前に進んでいきます。そんなキュアプリズムを演じることで、私も「悩んでもいいんだ」と思えるようになりました。以前は、悩む自分を否定していたというか、悩むばかりで前に進めないのはよくない状態だと思っていましたが、悩むことも大事だし、悩んでいる時間も自分のエネルギーにすればいいんだと思えるようになりました。

――プリキュアに2つのメインキャラクターで参加できるほどの加隈さんでも、そんなに悩むことがあるのですね。

加隈 悩むことばかりですよ。私はもともと才能があったわけでも、恵まれた環境にいたわけでもありません。福岡で会社員をしていて、どうしても声優になりたいという強い思いで上京したんです。

 つらいことや苦しいこともありましたが、上京した時の寂しさや先の見えない不安を思い出せばどんなことも乗り越えられると思って、一つひとつ努力を重ねてきて、いまがあります。

2023.09.16(土)
文=相澤洋美
撮影=杉山秀樹