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郊外でなく「まちなか」で植物観察するわけ

──植物観察会というと、郊外をイメージします。なぜ「まちなか」で開催しているのですか?

鈴木 野山だと確かに植物はたくさんありますが、場所によって特有の植物があり、そこの植物を専門にしているガイドがいるんです。でもまちなかは、どこへ行っても同じような植物が生えていてフィールドを選びません。もちろん専門のガイドもいないので、穴場だと思って始めました。

 「まちなかに植物なんてあるんですか」というのもよく聞かれるんですが、道端や空き地など、どこにでも植物は生えています。はじめは国分寺でやっていましたが、いろいろな場所から開催リクエストをいただき、今は、銀座、表参道、大手町など、オフィス街でも開催しています。

──パフォーマンスではない「観察」だと、どのようなことをするのですか?

鈴木 まず「木」を見るところから始めます。草は季節や環境によって形が変わってしまうので、初心者は変化の少ない木を見るところから入ると覚えやすいと、ぼくは思っているんです。そして木を見分けるためには、「葉」を観察します。イチョウやヤツデなど葉の形が特徴的なものもありますが、だいたいは葉脈や葉の縁のギザギザの形などで見分けることができるんですよ。

──花が咲いていればともかく、葉の違いで木を見分けるのは難しそうですね。

鈴木 葉がみんな同じに見えるのは、多くの人が木の葉を「卵形で緑色のもの」とカテゴライズしているからです。「縁がギザギザしている」「縁がなめらかで網目のような葉脈がある」など、葉の違いが分かるようになると、全然違って見えるようになりますよ。

──葉の違いを見分けるだけなら、AIでもできそうですが……。

鈴木 確かに写真を撮って画像検索できるものもあります。でも、AIはその葉が何の木であるか答えを教えてくれるだけですよね。自分で観察すると、葉の横に新芽が出ているとか、小さな実が隠れているとか、AIでは検索できないものを発見することができます。これが、機械と人間の違いだと思います。

 葉や木の細部を観察して覚えていくと、そこから樹木の名前を推測できるようにもなっていきます。草や花も同様に、植物のどこにどのように注目すればいいのかを知ることで、識別ができるようになると思います。

2023.06.01(木)
文=相澤洋美