この記事の連載

■「少しなら」と相手が聞く気持ちになる

【2】少しだけお話しさせていただいて

Aさん:この件について、ほかにご意見のある方はいらっしゃいますか?
Bさん:すみません、よろしいですか?
     ↓
すみません、少しだけお話しさせていただいてよろしいですか?

 とくにそこにいる人たちの時間を頂戴して、自分の意見を聞いてもらいたい場合に、前置きとして、おすすめのちょい足しことばです。

 お願いをしながらも、会話の主導権をしっかり得られるのが、この表現のいいところです。「少しだけ」と相手に負担をかけたくない意思があるひとことや、「お話しさせていただく」と相手にゆるしを乞う謙虚さで、威圧感は与えません。

 相手から「どうぞ」と了承を得たら、あとは自分の考えを落ち着いて話せば、耳を傾けてもらえるでしょう。

 「少しだけ」と断ったからといって焦って早口になっては本末転倒です。あまり長くなりすぎると聞く側の集中力を削ぎますが、このちょい足しによって聞く態勢になってくれているはずですので、安心して話しましょう。

 議論の場が煮詰まったとき、誰も発言せずに沈黙がつづいたときなどに、重い空気を一変させる効果もあります。

●ワンポイントアドバイス

少しお時間をいただけますか、という許可を求める意味になるのです。

■相手の勘違いを責めない

【3】誤解を与えてしまったかもしれませんが

Aさん:この文書ですが、目を通しておけばよいのですよね。
Bさん:変更点の記入までお願いしたつもりでした。
     ↓
誤解を与えてしまったかもしれませんが、変更点の記入までお願いしたつもりでした。

 行き違いや勘違い、聞き間違いを指摘したり抗議するような場面で、もし自分は何も間違っていなかったと思っていても、感情的に頭ごなしに「相手が100%悪い」という言い方は避けたいものです。

 自分が気づいていないだけで、伝えた際に、相手が勘違いする要素があった可能性をおわびしつつ、相手の勘違いをやんわりと指摘、「詰問」にならずに「どこが」「どのように」間違っているかを具体的に伝えることができます。冒頭に「もしかしたら」をさらに足しても効果的です。

 感情は声に正直に出ます。口先だけでなく、勘違いはお互いさま、の謙虚さを忘れないでくださいね。

*類義語

・当初のお約束とは〇〇の点が違うようですが
・私は〇〇と認識していたのですが


●ワンポイントアドバイス

お互い冷静に、行き違いを解消できます。

2023.05.18(木)
文=今井登茂子
構成=三宅智佳
撮影=釜谷洋史