大事にしているのは作り手へのリスペクト「作り手が納得できる価格で仕入れています」

――「Mogi Folk Art」でしか買えない別注品も多いですね

エリスさん そうですね。シェットランドの職人に岩手の“みの”をモチーフに編んでもらったニットやオレンジのラインが入ったムーンスターのスニーカー、そのほか焼き物やグラスなども別注で作ってもらっています。

北村さん 別注をお願いする際に私たちが大事にしているのが、作り手さんへのリスペクト。具体的には、作り手さんが希望する価格で買い取ることです。価格を上げたくてもなかなか上げられず、苦労されている方がたくさんいるのが現状。でも高いのには必ず理由があって、その理由や魅力を私たちがしっかりと評価してお客様へお伝えすることで、持続可能なもの作りの一助となればといいなと思っています。

「便利さや機能ばかりに囚われるのはもったいない」視点を変えて日々の暮らしをもっと豊かに

――おすすめのアイテムを教えてください。

エリスさん 島根県の出西窯に別注したピッチャーや栃木県益子焼のフラワーベースがおすすめですが、さらにこれらを組み合わせる方法も提案したい。こういう高さのある器は一点だけでなく何点かを棚に並べたり床に置くことでリズムが生まれるので、場所を取らずにアートスペースを作ることができるんです。

――なるほど、そんな素敵な楽しみ方があるとは新しい発見です。

北村さん これなら花を差していても差していなくても並べるだけで素敵ですよね。昨今は民藝の普及とともに“用の美”という言葉も浸透し、どうしても機能や使い勝手のよさにばかり目がいきがちです。でもそれってすごくもったいないと思っていて。

エリスさん 私たちの店には欧米諸国からのお客様も多くいらっしゃるのですが、皆さんあまり使い方にこだわらず、ビジュアルで気に入って手に入れてからかどうするかを考えるんです。大きさや重さに不便を感じがちな日本人に対し、海外の方はほとんど気にしない。美しくて素敵だと思ったら、素直に生活に取り入れるんですよね。

北村さん “見て美しい”ということも、用の美だと思うんです。日本ほど便利になった国はないと思うのですが、同時に少し寂しい気もします。便利な生活にちょっと不便なアクセントがあった方が面白いし、器を並べて置くなど少し視点を変えるだけで生活が豊かになる。民藝の美しさには、そうした魅力があると思います。

2023.01.21(土)
文=平野美紀子
撮影=釜谷洋史