轟洋介と僕の人生はリンクしている
――ではここからは、俳優業のお話に戻ります。様々な役を演じてきた前田さんですが、現在公開中の『HiGH＆LOW THE WORST X』での轟役でもファンが多いです。約8年やってきて、轟もご自身と重なるところはあったんでしょうか？
たまたまなんですけど、轟も智と同じなんですよ。なぜか役と自分(の状況)がすごく似ているというか。『X』に関しては、鬼邪高でのポジションを見つけた轟なので、肩の荷が無意識に降りている感じなんですよね。その状況は、今の自分ともリンクしていて。前作『WORST』では轟自身がすごく悩んでいて、僕自身も実は芝居で悩んでいた時期でした。僕自身が成長するタイミングに成長する役がたまたま巡り合わせで訪れているのかな、とも思うんです。
例えば、もしも前作『WORST』のとき、仕事もプライベートもとても潤っていて順風満帆だったら、きっとあの轟はできなかったと思うんです。もちろん頑張りますけど、あそこまでの闇は出なかったのかもしれないし。
当時の台本を見返したんですけど、(台本のページに)ペンで「轟」「轟」「轟」とすごい数を塗りつぶすみたいに書いていて、「あれ、こんなに悩んでたっけ！？」と思ったくらいでした。
――轟はシリーズ最初のドラマから『X』までずっと出ているキャラクターです。同じ役をずっとやっていると“ならでは”の体験もあるんでしょうか？
ありましたね！ 『X』の続編決定の情報解禁は、THE RAMPAGEのライブ内でしたんです。僕も塩野瑛久と一緒にステージに上がっていて。あのとき、それこそ2～3年ぶりに轟の制服に袖を通したんですけど、その瞬間に、なんか“降りてきた”感じがあったんですよね。それは初めての経験でしたし、我ながらちょっとゾクっとしましたね。
――興奮するエピソードです。ちなみに、初期の撮影のことも覚えていますか？ 村山役の山田裕貴さんとの激しいアクションシーンで人気に火がつきました。
もう、はい。あのときは口には出していませんでしたけど、おそらく何かこう……同世代の役者に対するひがみや、ジェラシーがあったと思うんです。そういうものがきっと轟の拳に乗って、村山と戦ったんですよね。結果、タイマンのシーンで僕はボコスカやられて。……本当に何でこんなに役と人生がリンクするのか、わからないくらいです(笑)。
――轟を演じ始めた20代前半～現在の31歳まで、役への向き合い方や臨み方の変化もありましたか？
当時はひとつの台詞に対して、20通りくらいの言い方を考えていました。「どれが一番いいのかな」、「どう台詞を崩したら自分のものにできるかな」と意識していたんです。あの頃は轟も含めヒール役をよくやっていたのですが、僕自身は犯罪をしたことがないのに、僕から犯罪者を生まなきゃいけない。そうするとゼロから作らなきゃいけないから、僕自身からかけ離れて役を作る、というのがベースでした。
今は自分から役を‟発生させる”ほうが合っているので、役作りに関してはだいぶ変わったかもしれません。そう変化した理由は、自分の中から作っていくほうがリアルなのかな、と思ったから。自分とかけ離れた役だとしても、自分にその役がきている意味は絶対にあるはずなので、自分を捨てたら役の魅力もなくなる、という考えになりました。
――いろいろお話いただきありがとうございました。最後の質問です。これからの自分に期待したいこと、課していきたいことなどはありますか？
今お話しした、以前のゼロから作る役の作り方と、今の自分の役の作り方を掛け合わせていけたらと思っています。僕は決めたらどっちかになってしまうタイプなので、昔吸収していたものがゼロになっちゃうときもあったりするんです。なので、うまいこと融合していきたいですし、その先に見たことのない芝居にたどり着けたらいいなと、そう自分に期待したいです。
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前田公輝(まえだ・ごうき)
1991年4月3日生まれ、神奈川県出身。6歳から子役として活動をはじめる。2003～06年にNHK 教育『天才てれびくん MAX』にレギュラー出演。2019年、映画『HiGH＆LOW THE WORST』の轟洋介役でヒット。NHK 連続テレビ小説『ちむどんどん』で、ヒロインの幼馴染・砂川智役を演じた。2022年9月9日(金)より『HiGH＆LOW THE WORST X』が公開中。
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文＝赤山恭子
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