KANタイムトラベラー説が浮上の公式サイト

 そんなKANは2022年の4月25日(月)でデビュー35周年だ。そこで襟を正し公式サイトへ。嗚呼、素晴らしく私好みでウットリ。ノスタルジィフレイバー漂うトップ! マウスを合わせると■が光るメニュー! スマホ対応への移行を諦めたっぽいレイアウト! しかし放置系ではなく、内容はぎっちぎちに濃厚。10月1日から始まる3年ぶりのバンドツアー「25歳」のバナーが輝いている!

 アーティスト活動以外にも「世界のレストラン」「ラーメンの世界」――。趣味紹介がナイスなスパイスになっている。

 1962年から2012年の彼のめずらしい人生が綴られた「ヒストリー」は読み物として嫉妬するほどの面白さ。デビュー年の1987年~1989年のタイトルは「静かにデビュー Jポップ界の盲点に君臨」。頂点ならぬ盲点……! くっ、山田君、座布団二枚!

 1994年~1995年は「イタリア語学留学、青島ビール工場見学」。ここではフィレンツェと中国の青島に赴いたインテリジェンスな様子とともに、次の一文が。

 “コンサートの形態も「音楽ギャグエンターテインメントショウ」思考へ向かって行く。”

 音楽とエンターテインメントショウの間に「ギャグ」がフレームインしている。そんな舵取りになっていたとは……! 語学の話と青島ビールの話の中にシレッと重要な音楽活動の方向性を埋め込んでくる。匠の技を見た。

 1991年から2001年のページには、結婚したことを理由にコンサートツアーで自らデザインしたウェディングドレスを集団で着用、ハードロックナンバーを演奏したという衝撃的なシーンが記されている。

 なんという発想。なんという行動力。KANへの興味は深まるばかりだ。

  一ページに一枚写真もアップされているが、驚くべきことに、KANは高校時代からほぼ変わっていない。私の中でタイムトラベラー説が浮上している。

 まだ見たことのない方、ぜひ公式サイトを訪れてみてほしいが、KANは恐ろしく沼が深い。情報量も多いので、読み終わったあとはボーッと雲と話をしたくなる。だから次の日が休日など、時間に追われていない日にゆっくり読むのがオススメである。

2022.06.17(金)
文=田中 稲