『トイ・ストーリー』『モンスターズ・インク』など、繊細なCGアニメーションでイマジネーションあふれる世界を描き続けてきたピクサー映画。

 3月11日(金)からディズニープラスで独占配信中のピクサー最新作『私ときどきレッサーパンダ』は、主人公の13歳の女の子・メイがレッサーパンダに変身してしまうという不思議な設定の作品だ。

 作品のテーマは“自分らしさはひとつじゃない”。主人公のメイは本当の自分を見出すために悩み、もがき、その中で家族や仲間との絆を再確認していく姿がこれまでのピクサー映画と同様、丁寧に描かれている。

 そんな主人公・メイの日本版声優を演じるのが佐竹桃華だ。声優初挑戦で主役という大役を担った彼女にデビューのきっかけや作品の見どころを聞いた。

この1年ぐらいは驚きの連続ばかりです(笑)

――今作は声優初挑戦、しかもピクサー映画の主役を射止めました。オーディションの結果を聞いた時はどう感じましたか?

 とにかくもう嬉しかったのと驚いたので大興奮。思わず鼻血が出ちゃいました(笑)。オーディションではうまく演じられたかな、と不安だったので「まさか!」という感じで。

 母もすごく喜んでくれて。私も母もディズニー作品が大好きなので「自分の子がピクサー作品の声優をするの?」って本当に驚いていました。日本語の予告がまだ出来ていない状態だったので、海外の英語バージョンの予告を何度も観て「これを桃華がするんだ」と我がことのように喜んでくれましたね。

――2020年の第44回ホリプロタレントスカウトキャラバンへの応募のきっかけもお母さんだったと伺いました。

 そうなんです。私は小さいころからずっとバレエをやってきて、高校もバレエの専門学校に通っていて。高校3年生の夏に短期でバレエの海外留学をする予定だったんですが、コロナの影響でなくなってしまったんです。

 学校も休みになったり、目標を見失ってしまう中でモチベーションが上がらない毎日を過ごしていたんですが、そんなときに母がオーディションの告知を見つけて「試しに受けてみなよ」って背中を押してくれて。

 まさか自分が特別賞をいただけると思っていなかったので、番号を呼ばれた瞬間は「嘘でしょ、聞き間違い?」みたいな。頭が真っ白になりましたね。

 なんだかこの1年ぐらい、驚いてばっかりのような気がします(笑)。

ちょっとダサくあれ、とずっと意識してメイを演じていました

――演じる主人公・メイはレッサーパンダに変身してしまうティーンエイジャーの女の子。変わった設定ですが、メイというキャラクターのファーストインプレッションはどんな印象でした?

 新しい個性を持った魅力的な主人公が誕生したと感じました。これまでの主人公ってキラキラしていたり、憧れの対象だったりするキャラクターが多かったと思うんですが、メイは普通っぽいというか、親しみやすくて共感しやすい子だなって。

 生意気だけど憎めないかわいさがあったり、それでいて垢ぬけてないところもあったり、等身大の女の子という印象です。

――今回は声優初挑戦ということでした。

 今振り返ると楽しかった、またやりたいって思えますけど、最初は本当に大変でしたね。

 目で台本を追いかけながら、映像もちゃんと見てセリフを合わせなきゃいけない。しかも耳からは英語が聞こえてきていて。同時に何か所にも神経を使わないとうまくシンクロできないんです。

 慣れるまでは収録が終わったらもう頭がパンクしそう、みたいな(笑)。家に帰ったら疲れ果ててポケーっとなっちゃってました。

――演じるにあたって意識した部分があれば教えてください。

 「ちょっとダサく」というのを常に意識していましたね(笑)。

 メイって頭も良くて、優秀な子なので、少し生意気な発言とかもするんです。自分的にはめっちゃイケてる雰囲気を出すけど、実際に客観的に見ると決まりきってない子。ちょっと垢ぬけてないとか、そういうアンバランスなところが魅力なんですよね。考えなく、そのまま演じていたら鼻につく子になってしまうなと思って少しダサさを盛り込むようにしていました。

――そうなんですね(笑)。具体的にこういうことをしたとかがありましたら教えていただければ。

 例えば、息遣いですかね。

 走っている時の息のアドリブとか、普通のイメージだと「ハアハアハア」というような均一のリズムで自然に呼吸をするだけでいいと思うんですが、そこに鼻息を入れてみたり、リズムを乱したり、ガニ股で走っているのかと観る人に感じさせるような演技を心がけていました。

2022.03.16(水)
文=CREA編集部
写真=石川啓次
ヘアメイク=堀口有紀
スタイリスト=石黒祥江