濃密なバラの香りに満ちたクルチュ村

クルチュ村にあるバラ園

 バラの生産や精製などは、ウスパルタの市街中心部から少し離れたところに点在する村で行われている。そのうちのひとつ、クルチュ村はウスパルタからおよそ40分のところにある小さな村で、村じゅうあちらこちらにバラ園があるせいか、どこも濃密なバラの香りに満ちている。バラの収穫は早朝のお祈り後に始まり、午前中のうちには終了する。というのも、バラが多くの太陽光線を浴びてしまうと、ここから抽出されるオイルや水分の生産率が落ちてしまうのだそうだ。最近では、収穫時期に合わせたバラ収穫ツアーなども催行されているという。

クルチュ村にある工場の大釜の中で、ダマスクローズが煮込まれている

 同じ村のなかにある工場では、その日に収穫されたバラが煮出し用の大に放り込まれる。この工場にはおよそ11台の大があり、ここで煮込まれたダマスクローズの花びらはオイルと水分とに分かれて抽出され、煮出しとろ過を何度も行うことによって純粋なローズオイルとローズウォーターが生まれる。オイルに関して言うと、およそ4トンのダマスクローズからたった1キロのローズオイルしか抽出できないことから、100gで750ユーロ(約9万5000円)とかなりの高値である。ギュルビルリッキのコスメブランド“ローゼンセ”ではこのオイルを含んだコスメ商品各種も販売されている。

 毎年この時期に収穫されたローズウォーターは100%ピュアな成分であるため、一年を通して使用が可能だ。ウスパルタにはローゼンセの直売店がいくつかあるが、イスタンブールではエジプシャンパザールや薬局(Eczane)で売っていることが多く、300ml入りが14~22トルコリラ(700~1100円)ぐらい。夏の観光では特に日焼けが気になるトルコ旅行、ヒリヒリした肌にこのローズウォーターを処方して癒やされるのもいいかもしれない。

左:大量のダマスクローズの花びらが釜の中に入れられる
右:釜から抽出されたのがこれ。上がローズオイル、下がローズウォーターになる

Rosense (ローゼンセ)
ローズウォーターを販売するブランド
URL www.rosense.com

安尾 亜紀 (やすお あき)
イスタンブール在住。イスタンブール大学大学院女性学研究所卒。女性誌や料理誌、報道関係まで幅広い分野でライター・コーディネーターを担当。トルコの「おいしい・楽しい・新しい」を中心に、All Aboutトルコ・イスタンブールでも情報発信中。

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text&photographs:Aki Yasuo