市のシンボルや市バスの模様もすべてがダマスクローズ!

ウスパルタの中心部には、街の象徴でもあるダマスクローズ・モチーフの門がある

 毎年5月中旬~6月中旬は、トルコ・ウスパルタ県でダマスクローズの収穫が行われる。バラの品種のなかでも最もオイル成分を多く含み、香りが濃厚なダマスクローズはウスパルタの名産。この時期に収穫されたダマスクローズから抽出された100%ピュアなローズウォーターは、アメリカやドイツ、日本など外国人観光客の間でも人気だ。

 現在、ダマスクローズの世界シェアは、ブルガリアとトルコ・ウスパルタが二分する形となっている。ウスパルタでの生産は1888年ごろから始まり、今ではウスパルタの雇用と経済を支える主要産業である。ウスパルタ市のシンボルや街の入口、市バスの模様などすべてダマスクローズだし、市街中心部にはバラ関連商品の直売店が3軒に1軒ほどの割合で並ぶ。

ギュルビルリッキ本社。ビルの壁はもちろんバラ色

 そんなウスパルタを代表するバラ生産・精製会社が、ギュルビルリッキ社である。6つの生産共同組合が一緒になった組織で、約8000のバラ生産農家が所属。収穫期になると1日に320トンものバラを取り扱う。ギュルビルリッキ社はローズオイルとローズウォーターを抽出する施設を4つ持っており、ローズオイルやローズウォーター関連のコスメ商品は“ローゼンセ(Rosense)”というブランド名で販売されている。

 ギュルビルリッキ社本部のGMで化学エンジニアでもあるイブラヒムさんによると、ローズウォーターには殺菌作用や鎮静・血圧降下の効き目もあるという。確かに、ローズウォーターは夏に使用するとかなりの清涼感をもたらしてくれ、数週間使い続けると肌が“シャキッ、プリッ”になっていく気がして手放せなくなってくる。バラの香りもかなりクセになるものなので、アイロン用リネンウォーターや部屋の芳香剤代わりに使うなど、生活のさまざまな場面で使用が可能だ。イブラヒムさん自身は、風邪をひいたときなど、温かい紅茶にこのローズウォーターを垂らして飲むと、なんだか鼻やのどの通りがすっきりするので愛用しているのだとか。

左:市内にあるローゼンセ直売店には、ローズウォーターやローズオイル系コスメ各種がそろっている
右:ウスパルタ市内には、ローゼンセ以外のブランドのショップも多く並んでいる

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text&photographs:Aki Yasuo