美人になるより垢抜けよ!

 “カメレオン俳優”といえば日本にも山田孝之という人がいるけれど、今ハリウッドで“カメレオン女優”の名を欲しいままにしているのが、マーゴット・ロビー。

 フィギュア界の問題児トーニャ・ハーディング、非業の死を遂げた女優シャロン・テート、エリザベスⅠ世、そして次はバービー人形、ハリウッド初期の大女優クララ・ボウも演じるそうだ。

 実在の人物だけでなく、最初に注目されたのは、絶世の美女役。ハーレイ・クインも、ターザンの妻も、まるで別人。

 それを体重操作も特殊メイクもなく、事もなげにやってのけているように見えるのがこの人の凄さ。こんなに楽々誰にでもなれてしまうのは、ある種の運動神経でありセンスなのだろう。

 逆から言えば、そういうセンスを養うことが、すなわちエイジングケアだと言っても良いくらい、この何かに化ける、何かを真似る感性は美しくなる上で極めて重要な能力なのだ。

 興味深いのが、実はもっと普通に化粧映えする、何やら上品で華のある顔立ちなのにそれをわざわざ隠して存在感を煌めかせる“フワちゃん”の本来の姿が、テレビの企画でバレてしまったこと。

 日頃こういう余裕をかましておいて、イザという時に正攻法のヘアメイクで美人を見せつけるのも、巧みな魅力学の秘策だ。

 一方で、今の日本で美を最も上手に操っているのが渡辺直美なのではないか。

 見て欲しい。多くのコラボ作品を提案してきたシュウ ウエムラと制作したこのビジュアル。なんという美しさ! と感嘆の声をあげる人が少なくないのだ。

 斬新とか既成概念を覆したとか、そういうことではなく、理屈抜きに美しい。新しい表現なのは間違いないが、何だか高級感があって格調高い。

 極めて高い美意識がないとここまでは表現できないはずで、とても耽美的。やみくもに美の多様性を訴えるのではなく、こんなふうにメイクの突き抜けた表現で、ある種の芸術性を高めていってこそ、美は本当の意味の進化を遂げるのではないか。

 それを教えてくれるのが今をときめく渡辺直美という人なのだ。この人ばかりは世界で通用すると、このビジュアルを見て思った次第。

 こうして見ていると、人が美しくなる時に必要なのは、ちまちましたテクニックよりもむしろセンスであり、ひたすら美人になろうとするより垢抜けようとする方が、じつは近道であることがわかってくる。

 自分を最短で美しくするものを見極めるセンスも含めて。

齋藤 薫 (さいとう かおる)

女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイストに。女性誌で多数のエッセイ連載を持つほか、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。CREAには1989年の創刊以来、常に寄稿している。

Column

齋藤 薫 “風の時代”の美容学

美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍する、美容ジャーナリスト・齋藤薫が「今月注目する“アイテム”と“ブランド”」。

2021.09.20(月)
文=齋藤薫

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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