コロナ禍の今、気を付けることは?
何を優先して持ち出せばいい?
次に、読者から寄せられたさまざまな質問を、德田先生にお伺いします。
Q1 コロナ禍の今だからこそ、備えるべきもの・ことはありますか?
先日も、熊本でコロナ陽性と分かったのにペットを預ける先がなくて、飼い主さんが自宅で亡くなるという悲痛なニュースがありました。コロナで心配なのは、陽性になった時に飼っているペットをどうするか、だと思います。本当は、陽性者のペットを預かってくれる施設があるといいのですが、そうもいかないので、日頃から預け先を考えておくことが必要です。
すべての災害に共通して言えることですが、避難所で生活するにしろ、誰かに預けるにしろ、事前の準備をしっかりすることが大切です。「ペットの防災 か・き・く・け・こ」とも重複しますが、最低限、予防注射を済ませておく、ノミ・ダニ・シラミや寄生虫の駆除をしておく、ネームタグやマイクロチップを入れておく、そして、少しでもペットが社交的でいられるように、他の人や動物に慣らして「社会化」することを心がけてください。
新型コロナウイルスの感染拡大は、台風などと一緒である程度予測がつくもの。いつ、どこで起こるか分からない震災などに比べて、具体的な準備ができるのです。もし自分がそうなってしまったら、と考えて、日頃からできることをやっておくことが安心につながります。
Q2 持ち出すものが多くなりそうで心配です。優先順位をつけるなら?
一番大切なのは、薬や療法食などその子に特有のもの。大きな災害の場合、全域で動物病院の機能がストップしてしまうことも考えられますよね。病院だけではなく、薬の流通ルートが壊滅してしまうこともある。持病などがある場合は、かかりつけ医に相談して、少なくとも1カ月分の予備を持っておくことをおすすめします。それを、ローリングストックしながら使っていくようにしましょう。
間違えがちなのはドッグフードやキャットフード。これを大量に持ち出そうとする人がいます。でも、ワンちゃんにしろ猫ちゃんにしろ、災害の時に山ほど食べる子はいません。むしろ緊張して1週間くらいは何も食べられなくなるもの。雨にぬれたり、カビが生えてしまう可能性もあるので、フードほど重たくて邪魔になるものはありません。
もちろん、ペットに食欲があって、飼い主さんに持ち出す余裕があるのが一番ですが、犬も猫も1週間くらいは食べなくなっても心配しなくて大丈夫ですよ。その代わり、脱水症状は怖いので、水分補給をしっかりとさせてあげてください。
逆に、心配だからと無理に食べさせようとしたり、栄養剤などをあげたがる人もいますが、普段食べなれないものは避けた方がいい。下痢に繋がる可能性があります。そもそも災害時はストレスで、動物は消化器にトラブルを抱えがちです。
Q3 ペットを連れて避難する時は、何を使うのが便利ですか?
スリングが一番便利だと思います。キャリーケースも後で必要になるのですが、慌てている時にはなかなか入ってくれないもの。とっさに中に入れて連れて行くのは難しい。キャリーケースには、必要なグッズを一式入れておいて、ワンちゃん猫ちゃんは抱っこして逃げるのが現実的です。
ただ、そのまま抱きかかえると、何かの拍子に逃げてしまう可能性もあるので、リードをつけるなどした上で、スリングがとても使いやすいと思います。飼い主さんの身体にぴったりと密着するので、ペットもすごく安心して落ち着いていられますし、飼い主さんは両手が空いて移動もしやすい。
これも日頃から慣らしておくことが大切で、例えばワンちゃんの雨の日の散歩はスリングで連れ出してみるなどするといいですね。楽しんでくれると思います。また、乳母車形のペットカートやバギーなども、実は便利です。一見、邪魔になるように思うのですが、飼い主さんの荷物も含め、どんどん物が積めて転がしていける。避難所でも立派なベッドになりますよ。
2021.09.11(土)
文=CREA編集部