島建ての神アマミキヨが最初に降り立った聖地「安須杜」

 街灯などない山中をこわごわと走っていたら、ヘッドライトが照らし出したのは見たこともないような大蛇。胴体は直径12~13センチ、頭はこぶし1.5個分くらいあったでしょうか。道いっぱいを閉鎖するように、横切っていました。

 その威風堂々とした態度と神々しいばかりの存在感に、「あれは山の神様に違いない」と畏敬の念を感じたのを覚えています。今回のやんばるでその話をすると、「ハブだったんじゃない? たまに出るよ~」と、こともなげ。自然のスケールが違うのです。

 ちなみに、中南部からやんばるへ向かう国道58号の沖縄県の起点は、国頭村の奥集落。鹿児島港(西郷隆盛銅像前交差点)を起点に、海上航路部分も国道扱いをしているため、総延長は875.7キロと、日本一です。その実、海上が7割を占めているのですが。

 沖縄本島の中南部とは、どことなく空気感が変わる北部。その理由は、土地のなりたちの違いにあるようです。

 北部には沖縄の島建ての神、アマミキヨが最初に降り立ったとされる聖地、安須杜(あしむい)があります。辺戸岬からみると、森の中から4つの石灰岩の峰がそそり立っている安須杜には、ただものではないオーラが漂っています。

 この石灰岩は、実に2~3億年も前のもの。移動してきた海洋プレートが大陸プレートにぶつかって沈み込む際に、海洋プレート上に乗って運ばれてきた石灰岩が沈み切れずに大陸プレートの端にくっつき(ちょうどローラーベルトの端で余分なものがひっかかり、積み重なった感じ)、一部が盛り上がったもの。

 一方の中南部は、2,000万年前の隆起サンゴ礁。北部とは年代のケタが違って、地球からすれば、若い(!?)のです。

 だから、中南部のビーチはサンゴ礁から生じた白砂&遠浅。それに対して北部は圧縮された石灰岩のごつごつとした岩山で、ほとんどがサンゴの嫌う酸性土壌。そんな違いから、ビーチの雰囲気も違ってきます。

2021.08.14(土)
文・撮影=古関千恵子