粘土を貼り付けて飾っていく、足し算の造形が縄文らしさ

 道具の作り方という点からいうと、旧石器時代は石を打ち割って形を作る「引き算の造形」であるのに対して、縄文時代は粘土を継ぎ足し成形する「足し算の造形」。

 土器ひとつとっても粘土や植物など身近にある材料を使い、器用に道具として形作っている。縄文時代は紀元前1万3千年ごろから前400年の約1万年間続いた。技術は、時を重ねるごとに高まったのか。

 「縄文時代の始まりのころから土器を上手に作っていた地域があれば、ずっと作りの粗い地域もあったり(笑)、土器作りへの思いによって出来栄えが違うように感じます。

 時期ごとの特徴は大きさや色、形という視点から見ると変化を辿りやすいです。

 火焔型土器に代表される縄文時代の中ごろの土器は大きく明るい色調なのに対し、遮光器土偶が作られた晩期は小さく暗い傾向に。大きさや色だけでいつごろの土器か知ることができます」

 土器や土偶の変遷を東京国立博物館で一度見ておくと、遺跡巡りをする際に縄文文化の捉え方がいっそう深まるもの。今回の旅は2021年5月にユネスコ世界文化遺産登録の勧告を受けた北東北の遺跡に焦点を当てた。

 楽しみ方を伺うと、

「発掘調査の成果をもとに当時の人々が食料にしたクリやクルミなどの植生や川や海に面した遺跡の景観を復元していますので、縄文人がなぜこの場所を選び暮らしたのか、の理由を体感できると思います」

 遺跡周辺にはガイダンス施設が設けられ、当時の生活の片鱗を現す出土品も見どころ。古の営みに心を傾ければ彼らの息遣いが聞こえてくるよう。

東京国立博物館

所在地 東京都台東区上野公園13-9
電話番号 050-5541-8600
開館時間 9:30~17:00(最終入館 16:30)
休館日 月曜(祝日の場合は翌日休み)
観覧料 1,000円
https://www.tnm.jp/
※入館方法・展示情報などはホームページで確認を。

Photographs=Asami Enomoto