●「テニミュ」出演秘話

――その後、大きな転機となった作品は?

 やはり「ミュージカル・テニスの王子様2ndシーズン」(11年~12年)でしょうか? 初舞台が主演だったこともあり、次々と舞台のお仕事のオファーがくるのでは? と淡い期待をしていたのですが、まったくなくて(笑)。またアルバイトをしながら、コツコツとオーディションを受け続けていました。「テニミュ」は、それまで2回落ちていて、3回目の挑戦でした。

――そこで演じられた手塚国光は、1stシーズンでは城田優さんも演じて話題になった人気キャラでした。

 2回目のオーディションがダメだったときに、プロデューサーの方から「今後、新キャストで2ndシーズンを始めるので、そのオーディションを受けてほしい」と、声をかけていただいたんです。最初は、乾貞治というキャラで受けたのですが、3次オーディションから手塚になり、7次オーディションぐらいで決まりました。

 プレッシャーというよりも、オーディション中、横浜アリーナでのコンサートに招待され、今まで見たことのない女性の喝采を目の当たりにしていたので、自分も頑張らないと! という気持ちでいっぱいでした。

●舞台の技術を学んだ「逆転裁判」

――手塚の役作りに関しては? そして、この舞台から学んだことは?

 原作を何度も読み返しましたし、手塚は左利きなので、食事をするときなど、普段から左手を使うように心がけました。その後、2年半、専属として、同じチームメイトと一緒だったこともあり、環境からも手塚になっていきました。この舞台でいちばん学んだことは、諦めないことです。

 当時「テニスの王子様」の人気はありましたが、僕ら「2ndシーズン」の初日の幕が開いたら、お客さんが半分以下になっていたんです。それは疑心暗鬼になるほどでした。事態を打開するために、稽古前にみんなで集まって、踊りや歌の練習を始めたんです。その思いがスタッフさんにも伝わり、いろいろ協力してくださったんです。最終的には、そんな熱量やエネルギーがお客さんにも伝わり、どんどんお客さんが増えていきました。

――続いての和田さんのハマり役といえば、13年~15年に上演された「逆転裁判」 の検事・御剣怜侍になります。

 とにかくセリフ量も、専門用語も多かったので、改めて気合いを入れて取り組んだ作品です。ただ、手塚をやっていたクセがなかなか抜けなくて、苦労したことを覚えています。そして、演出家の方から、キャラクターを演じることと、一人の人間を演じるバランスを学ばせていただきました。

 「逆転検事」(16年~17年)を含めれば、同じ役を演じた最長期間になります。クールな役であるうえ、裁判の臨場感を出すためにマイクを使わない大変さはありましたが、そういう舞台の技術を学ばせてもらいました。

~次回は最新出演舞台「首切り王子と愚かな女」についても語っていただきます~

和田琢磨(わだ・たくま)

1986年1月4日生まれ。山形県出身。2009年、舞台「流れる雲よ~DJ から特攻隊へ愛を込めて~」で主演を務め、「ミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズン」では6代目手塚国光を演じる。13年の舞台「遠い夏のゴッホ」のほか、18年にはドラマ「僕らは奇跡でできている」(関西テレビ)、19年には「人生が楽しくなる幸せの法則」(読売テレビ)に出演。20年には「科白劇 舞台『刀剣乱舞/灯』改変 いくさ世の徒花の記憶」や舞台「PSYCHO-PASS」に主演。現在、オトナの土ドラ「#コールドゲーム」(東海テレビ)に出演中。

「首切り王子と愚かな女」

雪深い暗い王国ルーブ。先王バルが早くに没して20年。女王デン(若村麻由美)は「永久女王」としてルーブを統治していたが、溺愛していた第一王子ナルが病に倒れてからは国のことを見なくなり、魔法使いを城に招き入れ、閉じこもるようになった。そこで城に呼ばれたのが第二王子トル(井上芳雄)であった。使命に燃えたトルは、反乱分子の首を次々に落とし「首切り王子」として恐れられるようになる。一方、ループの中にあるリンデンの谷に住む娘、ヴィリ(伊藤沙莉)は死ぬことにした。これ以上、生きる理由が見当たらなかったからだ。最果ての崖にたどり着いたヴィリが目にしたものは白い空と黒い海と首切りの処刑であった。首切り王子トルは死を恐れないヴィリに興味を持ち、召使いとして自分に仕えるように命令する。
https://stage.parco.jp/program/kubikiri/
6月15日(火)~7月4日(日)東京PARCO劇場
7月10日(土)~7月11日(日)大阪サンケイホールブリーゼ
7月13日(火) 広島JMSアステールプラザ 大ホール
7月16日(金)~7月17日(土)久留米シティプラザ ザ・グランドホール

Column

厳選「いい男」大図鑑

 映画や舞台、ドラマ、CMなどで活躍する「いい男」たちに、映画評論家のくれい響さんが直撃インタビュー。デビューのきっかけから、最新作についてのエピソードまで、ぐっと迫ります。

2021.06.04(金)
文=くれい響
写真=平松市聖