自転車で走るイタリア トスカーナ　
花と緑のサイクリングロード

サイクリングを楽しむコツ

沿道を彩る春の花々

 高台の広場から自転車で一気に駆け下ります。沿道には花が咲き、まさに薫る風を切って走る爽快感。これは車でも、徒歩でも味わえない特別な快感。寒くつらかった冬の思い出が風とともに一気に後ろへ消し飛び、新しい光の道が開ける歓喜、いや大げさですが、そのくらい気持ちよく風を切って進みます。

ガルッツォの朝市。野菜に、ハムにチーズ、雑貨や洋服まで生活に必要な物がたくさん並びます

 ミケランジェロ広場から駆け下りると、隣町のガルッツォに着きます。なんてことはない小さな町ですが、古い町の教会、公園の朝市、BARで立ち話する人々、「チャオ！」と明るい挨拶が聞こえる、イタリアの日々の暮しがあります。きっと観光バスに乗っては見られないイタリアの景色。世界遺産も素晴らしいけれど、イタリアの本当の素晴らしさはこんな人々の暮しのなかにあると思うのです。

 ガルッツォの町から先へ進んで、今度は丘を上ります。上り坂はかなりきついですが、上りきって開ける景色は絶景。オリーブ色の丘が連々と遠く雲の元まで広がっています。丘を渡る爽やかな風がサラサラと吹き、全力で坂をこいで疲れた体を、そして心までも癒してくれます。こうやって広い景色の中に立ってみると、小さく凝り固まっていた自分に気付かされたりするものです。そして大きく深呼吸。なんだか伸び伸びと生き返った気分です。

ガルッツォの先、チェルトーザ付近の丘。チェルトーザには14世紀に立てられた修道院もあります

 自分を少しだけ遠くに連れて行ってくれる自転車。もし、旅先で、自転車に乗って少し遠くへ、こんな景色がみたいと思ったら、町の自転車屋さんを味方につけましょう。道や、もし海外なら交通事情など、きちんと把握しないと、自転車も危険な乗り物になってしまいますから。

 フィレンツェにも、自転車のレンタルから、サイクリングの道案内まで丁寧に対応してくれる自転車屋さんがあります。また、ガイドのついたサイクリングツアーも行っているそうなので、こちらなら見知らぬ町でも安心です。町を廻るシティーツアーもいいですし、トスカーナの緑の丘を走る本格的なロードツアーもあります。このロードツアーにはいつか私も参加してみたいと思っています。

 もうすぐ連休という方もいらっしゃるでしょう。新緑の美しい頃、青空の下のお出かけは気持ちいいですよね。連休の方もそうでない方も、爽やかな好季節、みなさまどうぞ楽しいひとときを。

藤原亮子 (ふじはら りょうこ)
イタリア・フィレンツェ在住フォトグラファー＆ライター。東京でカメラマンとして活動後、'09年、イタリアの明るい太陽(と、おいしい食べ物)に魅せられて渡伊。現在、取材・撮影・執筆活動をしつつ、イタリアの伸びやかな景色をテーマに写真作品も制作中。イタリアでの日々をつづったフェイスブック www.facebook.com/chococogogo