古代エトルリア文明からつづく天空都市
そこから見えるものは空しかない。美しい丘陵地帯がつづくトスカーナの中西部、ふたつの谷に挟まれたひときわ高い崖の上にボルテッラの町はあります。フランスの文豪スタンダールも「とある高い丘の、一番高い所にある町」と記したように、そり立つ崖の天辺にある町は、まるで空の上に造られたかのように、広い空に抱かれています。
右:町の中心に立つプリオーリ宮
もともと豊富な鉱物資源をもつこの土地には、いにしえから人が移り住んでいました。その歴史は古く、紀元前、古代エトルリア文明までさかのぼることができます。その後、ローマ時代に都市として最盛期を迎え、中世でもシエナなど有力都市を結ぶ中継地として重要な役割を果たしてきました。
右:小さな路地裏に見かけたかわいらしい景色
町の見どころは、丘の上からの絶景、どこまでも広がる空と大地の伸びやかな景色。そして、中世の面影をそのままに残す町並み。それは青空に映え、まるでおとぎ話の国のように美しい。空に続くかのように高く伸びた目抜き通りを歩けば、ふと脇に、小さなお話が隠れているようなひっそりとした細い路地があったり、ある低い門をくぐれば、その向こうは青空の崖っぷちだったり。小さい町ながら楽しい散歩道。
また、その長い歴史が残した興味深い軌跡を見ることができるのもこの町の魅力のひとつ。古代文明の出土品を展示したエトルリア博物館やローマ時代の劇場跡、ルネッサンス期の絵画を収蔵した美術館など見どころもさまざまです。