“Passione” 熱い思いで作るチョコレート

 ロンドン・アカデミー・オブ・チョコレートのチョコレート・アワードで数々の受賞を誇るチョコレート工房「AMEDEI」。実はイタリア・トスカーナの静かな丘の上にあります。バレンタインを前においしいチョコレートが目白押しの今、そのおいしさの秘密を聞きに、工房へ行ってきました。

アメデイの工房。カカオの森をイメージしたかわいらしい壁画が描かれています

 まずはディレクターのジョバンニさんの案内で工房を見学。原料となるカカオ豆は生産地まで足を運んで厳選したものを使います。それは、チョコレートもワイン同様、良いぶどうでなければ良いワインができないように、良いカカオ豆であることが重要だからです。カカオは本来、畑のような広々としたところで育つのではなく、森の中、大きな木の下に育つ低木。そのような適切な環境で丁寧に育てたものでなければ、本来の味はそこなわれてしまいます。そのため育つ環境を実際に目で見て、育った豆を味わって選ばれています。

 厳選された豆は、工房で焙煎し、すりつぶし、砂糖を混ぜてチョコレートとなっていきます。その後、実に4日をかけて丁寧に練られたチョコレートは、滑らかな舌触りと、華やかで香ばしい香りを身につけていきます。

4日をかけて行われる練りの作業。この作業を経ておいしいチョコレートへとなっていきます

 生産過程でのAMEDEIのこだわりは、決して添加物を入れないこと。混ぜるのは砂糖とミルクのみ。実は多くのチョコレートにはたくさんの添加物が混ぜられています。それは、早く、大量につくり、一定の品質を保つために必要なものなのですが、ここでは一切使わない。なぜならカカオがもつ本来の香ばしさ、旨味、個性を殺してしまうから。しかし使わないとなると、その代わりに時間のかかる丁寧な作業と、さらに、カカオの個性を活かすレシピを研究し続けなければいけない。それは気が遠くなるほどの努力なのです。

「そりゃあね、大変だけど、もうこれは熱い思いがないとできないね、“Passione”だよ」と笑うジョバンニさんの瞳にさす情熱の光が印象的でした。

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