先人たちの知恵が詰まった渡名喜島の集落の特徴

 集落内は推定の樹齢が200年を超すとされる、みごとなフクギ並木が続いています。

 フクギは砂地でもしっかりと根を張るため、台風の通り道である沖縄では屋敷林としてよく見かける樹木です。

 海に囲まれている島では、塩害からも守ってくれます。

 肉厚の葉がびっしりと生え、夏は強い日差しを遮り、蒸散作用によって住居内の気温を下げる効果も。

 冬は吹きすさぶ北風を防いでくれます。おまけに幹は建材に、木の皮は染料に、葉は燃料にもなる、重宝な存在です。

 渡名喜島では赤瓦をのせた住居が道路面よりも、やや低い位置に建てられているのが特徴。これは、台風の暴風の影響を防ぐため、家をできるだけ低くしているのです。

 サンゴなどを積んだ門の間、少し引いた場所には「ソーンジャキ」(返風)という塀が立てられています。

 県内では「ヒンプン」とも呼ばれるこの塀は、住居内が外から見えないようにするため。魔除けの役割もあります。

 碁盤の目のように走る幅2メートルほどの小道も、意識してみると、まっすぐではありません。これは台風の暴風対策として、風通しをあえて悪くするため。

 そして、良い運気が通り過ぎないように、という風水的な意味もあるそうです。先人たちの知恵が詰まった伝統的建造物群なのです。

 渡名喜島に最初の赤瓦葺の貫木屋(ヌチジャー)が、誕生したのは1892年のこと。

 王府時代は身分によって住宅スタイルに制限があり、それが解除されたのが1889年。

 カツオ漁で潤っていた渡名喜島は、離島ながらも、取り入れる時期が早かったようです。

 その後も渡名喜島では貫木屋赤瓦葺が増え、1920年頃までには村内の9割を占め、現在のような集落の景観が整いました。

 そんな渡名喜島の集落では、朝と夕に美しい光景を見かけます。

 朝の気持ちのいい光景は「朝起き会」。早起きをした子供たちがラジオ体操の後、くま手を手に白砂の道を掃き清めるのです。

 子供だって島の一員としてのお役目をこなす、100年以上続く、他の島にはない素晴らしい習慣です。

 そして夕方から夜にかけては白砂の道を、等間隔に置かれたフットライトが照らします。このライトの光がなんとも幻想的なのです。

2020.12.22(火)
文・撮影=古関千恵子