持ち前の臨機応変さでマスクも日々の彩りに変えて
店舗の入り口に設置されたアルコール消毒液や社会的距離を促すポスター。リストランテのテーブルには、メニューを読み取るQRコードが置かれてもいるけれど、違和感や窮屈さを感じない。目新しかった感染対策もすっかりイタリアの日常に溶け込んでしまったかのようだ。街行く人には、マスク姿も多い。
イタリア人には馴染みのなかったマスクだが、付き合いはすでに半年。色や素材のバリエーションも豊富になり、靴やバッグとコーディネートしたり、帽子と共布で揃えたり。コーラルピンクやヴィヴィッドオレンジ、カーキ……トレンドカラーのシルク製マスクカバーを「夏の間はマスクなしでつけると涼しい」などとおすすめされたりもする。機能性と目的は、どこ吹く風。もはや完全におしゃれアイテムだ。
「また秋に第2波がきたら、これにマスクをプラスすれば良いじゃない?」。はたしてそれで良いかはさておいて、イタリア人の柔軟性には恐れ入る。保守的なようだが寛容で、マスクもするりと受け入れてしまった。それも自由に、自分流に楽しみながら。
それはきっと、イタリアがスムーズとはほど遠い非秩序的な社会だからなのだろう。電車は時間通りには来ないし、郵便物だって配送中になくなることもある。ゴミ収集時間も気まぐれで、予告なしに断水もする。大なり小なり常に問題が勃発する毎日は、臨機応変さなくしては成り立たない。想像力を働かせ、発想を転換し、ときには諦め笑って明日を待つ。
日々鍛えられた対応力は、コロナ禍においてもおおいに発揮されているのだ。
Text=Sawako De Nola Iwata
Photo=Alessandro Di Giugno