一つだけわかっていることは 人はみんな違うということ
モデルを始めて、ブログをやるようになると、文章をただ書くだけでなく、それを発表して多くの人の目に留まることの利点と欠点、その両方に気づくようになる。
「僕、普段はなるべく、しょーもないことやくだらないことで笑っていたいんです。できるだけフワフワと生きていたい(笑)。
だから『書いたものに共感してほしい』とか考えないし、心の中のことなんて全ては“秘め事”なんだから、あまり心情をつまびらかにするよりは、読む人に想像する余地があったほうがいいんじゃないかな、なんて思う。
だって、全部共感されると、『ふーん、わかるわかる』で終わりだけど、ちょっと『え?』って思うことがあったら、『なんでこうなんだろう?』って、考えるきっかけになるかもしれないじゃないですか。
だから、僕の場合も、文章の中にどこか、“秘め事っぽさ”は残しておきたいのかも。
それによって、『好きだったのに、なんか残念』って思われたとしても、そんなふうに簡単に切り捨てられちゃう好意なら、切り捨てていただいてこちらは全然大丈夫です(笑)」
文章を書くことで誰かを傷つけたり、自分自身も傷ついたり。10年前のそんな経験は、今回のエッセイにもしっかり活かされている。
「僕は、他人に対してドライなのかもしれません。自分のこともよくわからないのに、他人のことなんてわかるわけがないと思う。一つだけ確実にわかっていることは、人は、みんな違うということです」
そうして、頭の中に湧き上がる思いを説明しながら、真面目な話に傾きすぎたと思ったのか「何の話ですかこれ?」と言って笑った。
2020.08.06(木)
文=菊地陽子
撮影=桑島智輝
スタイリスト=寒河江 健
ヘアメイク=堤 紗也香