#04 誰もが誰かの人生とつながっている

『フィフティ・ピープル』
チョン・セラン 著 斎藤真理子 訳

 主な舞台は大病院と、そこにつながる市井の人々とその暮らし。

 「50人以上の医療人や患者やその家族らが、それぞれの人生の断片を開示してくれるのですが、数ページの各エピソードの濃いこと。過積載のトラックによる死亡事故の話やDVでのケガの話など重いものもありますが、どこかに自分とオーバーラップする人物がいるのではないかと思います。

 一見平凡な市井の人物さえ、誰かの人生にめぐりめぐって影響を与えているかも知れない、そんな気持ちになります」

#05 精神の自由を求めた衝撃の回想録

『テヘランでロリータを読む』
アーザル・ナフィーシー 著 市川恵里 訳

 イスラーム革命後のイラン。弾圧のため職を失った女性教授は、教え子たちと密かに禁じられた小説を読む読書会をひらく。

 「実際に、『ロリータ』や『グレート・ギャツビー』などについて少女たちが語り合った感想に刺激されます。その回想録であり、ノンフィクションですが、小説のような趣です。知を求める心は決して縛れないことに勇気づけられます。読書を愛する人にぜひ読んでもらいたい一冊です」

 今回、本を選んでいただいたのは……

三浦天紗子さん
(みうら あさこ)

東京都生まれ。ライター、ブックカウンセラー。「CREA」「anan」「サンデー毎日」「小説宝石」で著者インタビュー、ブックレビューを担当。女性の幸福をテーマにした書籍も執筆。著書に『モテる女のひみつノート』(戎光祥出版)、『そろそろ産まなきゃ 出産タイムリミット直前調査』(阪急コミュニケーション)などがある。