台湾の山奥で知る
温泉文化の新たな贅沢

●星のやグーグァン

 星野リゾートが、また新たな魅惑のデスティネーションホテルを誕生させました。それが2019年6月末、台湾中部の山峡の地にオープンした、星のやグーグァンです。

 巨匠建築家たちがデザインを手がけたミュージアムが点在し、最新アートと伝統芸術があふれる街として注目を集める台湾中部の都市・台中。その中心街からリゾートの専用車に乗ること約90分。

 幽玄な光景が広がる大甲渓谷の集落・谷關(グーグァン)は、古くからタイヤル族が暮らし、今から100年ほど前に温泉が開かれたという安息の地です。

 レトロな温泉街の風情を今に残しながら、秘境感たっぷりの大自然が守られた場所として、長く台湾の人々に愛されてきました。

 リゾートが位置するのは、温泉街のはずれの閑静な一角。樹齢百年以上の松など、この山峡の地に根差す木々をそのまま生かしたランドスケープが美しく、幻想の森がゲストに上質な安らぎをもたらします。

 この真新しい宿のテーマは「温泉渓谷の楼閣」。

 気になる泉質は、肌触りもやわらかな弱アルカリ性炭酸水素塩泉で、きらきらと輝く透明な湯は、つかるたびに心身を優しく癒やしてくれる美肌の湯です。

 客室には、ゆったりと全身つかれる半露天風呂を備えています。しかも、すべてが源泉かけ流しという贅沢さ。豊富な湯量を誇る谷關ならではの、心地よい湯浴みを堪能できます。

 また、体を思い切りのばして温泉の効能を体感できる大浴場も大きな魅力です。とくに、開放感いっぱいの露天風呂は格別。爽快な青空の下、幻想的な星空の中……、この心地よさは、まさにここだけのもの。

 台湾という異郷だからこそ満喫できる、これまでにない温泉体験です。

構成・文=矢野詔次郎
撮影=志水 隆