実は北米には
1,200カ所もの温泉がある
ではハワイがうまくいったと仮定すると、その先の北米進出の形はどのようなものになるのだろうか?
「日本旅館、願わくば温泉旅館を北米で運営したいと思っています。実は北米には1,200カ所もの温泉がありますが、温泉が噴き上げている様子を写真に撮っておしまいで、うまく活用しているとは思えません。
一方で日本にお見えになる欧米のお客様は、みなさん日本の温泉文化を気に入ってくださって、裸になってお湯に浸かるのが野蛮でイヤなんて言う人はいません。
私が北米に留学していた1980年代はだれも生魚なんか食べなかったのですが、いまや世界中に寿司屋があります。
寿司の文化が世界中に認められたように、日本旅館として海外に進出することが、日本の旅行会社らしい取り組みだと考えています」
東京オリンピックの後が
なんといっても大事
東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年は、海外からたくさんの方が日本を訪れることになるはずだ。そのための特別な企画などを考えてはいるのだろうか。
「2019年のラグビーワールドカップは約40日間でしたが、オリンピックはパラリンピックと合わせても30日程度と短い期間なんです。
だからそのためだけに何かをやるというよりも、その後の準備が大事だと社員には言っています。
需要があるから価格を高くして儲けようというのではなく、イベントがなくても日本に来たいと思っていただけるように日本の魅力を伝えていくことに力を入れたいですね」
そして星野氏は、その一例としてOMO5 東京大塚でのアイデアを紹介してくれた。
「OMO5 東京大塚では総支配人を中心に、オリンピック期間中は卓球をテーマにしようと話し合っています。
いろいろと企画があがっていますが、各フロアに卓球台を置いて毎日トーナメントをやったり、ホテル全体を卓球ミュージアムにしたり、駅前の広場でイベントをやったりするなんていうアイデアが出ています。
卓球に興味がある人に泊まっていただければ、宿泊者同士の交流も盛んになるでしょうし、いいアプローチだと思っています」
星野氏のお話で印象的なのは、東京オリンピック・パラリンピックを“かき入れ時”だと捉えていない点だ。
「普段から気をつけていることは、中長期的な会社の競争力を大事に考えようということです。
今月は目標の売り上げを何%上回ったとかを気にするよりも、オリパラの30日間にやったことが将来につながることが大事。
あの人たちはおもしろいことをやっているな、と思っていただくことが大切ですね」
文=サトータケシ