「モードの民主化」をもたらした
時代の先駆者

 デザインのみならず、カルダンはビジネスでも時代の先駆者でした。

 フランス オートクチュール協会の会員でありながら、1959年には百貨店プランタン向けにプレタポルテ(既製服)を始め、「モードの民主化」をもたらしたのです。

 そして60年代には、初めてライセンスビジネスに着手して、850ものライセンスを取得、もっとも世界で知られるブランドになりました。

 この展覧会では、ファッションのみならず、家具やインダストリアルデザインにおよぶ広範なキャリアを網羅して、展示数は170点以上。

 カルダンの才能の幅広さを、あらためて感じさせられます。

 日本とのかかわりも深いのが、カルダンです。日本に注目した初めてのオートクチュールのデザイナーであり、1958年に初来日。

 日本人モデルの松本弘子を見出して、起用したことも有名であり、その松本弘子の写真が飾られたコーナーもあります。

 常に時代の先をいき、新しさに挑戦したピエール・カルダンの足跡をたどることができ、またその当時、人類が信じていた明るい未来観も感じ取れます。

 この展覧会に合わせて、館内にあるレストラン「ザ・ノーム」でも特別メニューを提供しています。

 レストラン「マキシム」のオーナーであるカルダンを祝し、「マキシム・アット・ザ・ノーム」と題して、パリのクラシックなフランス料理をミシュランの星に輝くシェフのサウール・ボルトンが手がけます。

 ぜひこの機会に、ブルックリンに足を延ばしてみてください。

※All images courtesy of The Brooklyn Museum

ブルックリン美術館

所在地 200 Eastern Pkwy, Brooklyn, NY 11238
開館時間 11:00~18:00(木曜 11:00~22:00、毎月第1土曜 11:00~23:00) ※2020年1月5日(日)まで開催
休館日 月、火曜
入場料 大人 20ドル(入館料、ピエール・カルダン展チケット)
https://www.brooklynmuseum.org/

黒部エリ

ライター、作家。東京都出身。大学卒業後、「アッシー」他の流行語を生み出すなど、ライターとして情報誌から広告まで幅広く活動した後、94年よりNY在住。ファッション、ビューティー、アートやレストラン、人物インタビューなどなど、旬な情報を発信し続けている。著書に『生にゅー! 生で伝えるニューヨーク通信』(文藝春秋)などがある。
https://erizo.exblog.jp/

Column

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文=黒部エリ