「ピエール・カルダン:未来のファッション」展が、ブルックリン美術館で開催されています。

 これはカルダンの50年にもおよぶキャリアを回顧するという大がかりなもの。

 カルダンを代表する60年代、70年代、80年代のファッションを中心に、インダストリアルデザインも網羅しています。

 カルダンは1922年生まれ、10代からテーラーとしての修業を始め、パリに出てから1946年にクリスチャン・ディオールのメゾン立ちあげに参加しました。

 そして1950年に自身のブランドをスタート。コスチュームデザインから始まり、オートクチュールに進みました。

 カルダンは未来的な形やモチーフを好み、それまでの「女性らしい」ファッションの概念を打ち破ったといえます。

 布を建築的なセンスをもって立体的に形づくっていくカルダンのデザインは、幾何学模様と共に彼のシグネチャーになりました。

 なかでも有名なのは、1964年に発表した「コスモコール(宇宙)」コレクション。世界をあっと驚かせたデザインで、カルダンの代表作です。

 ビニールやメタリックな布などそれまでにない素材使い、巨大なジッパー、宇宙飛行士のヘルメットのような帽子などが斬新です。

 時代の寵児であったカルダンは、ブリジット・バルドーやローレン・バコール、ジャクリーヌ・オナシス、ラクウェル・ウェルチなど、当時のセレブから愛されました。

 常に新しいテクノロジーと未来に魅せられていたカルダンは、1971年にはNASAを訪れて、市民としては初めてアポロ11号で着用された宇宙服を身にまといました。

文=黒部エリ