ダイヤモンドの歴史を刻み
愛の絆を結んでゆく
![](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/3/4/-/img_34170527da4cb159d24821845e795a1131965.jpg)
少し遅い初夏。優雅に流れる運河の水面も傍の新緑も、陽光を浴びて宝石のようにキラキラ輝いている。
![](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/1/6/-/img_16ae9985cf12957bffa9cb7b917fda40895116.jpg)
ここは17世紀頃から“ダイヤモンドの街”として知られるアムステルダム。遡れば中世の時代に迫害を受けたユダヤ人が、信教の自由のあるこの地に安住を求めたことが発端という。
![](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/2/7/-/img_27fd343a9f36c61ddc1ad12f9a4d5669172070.jpg)
携帯が容易で資産価値が高い宝石類を好んで所有した彼らは、アムステルダムでビジネスの礎を築いたのである。
1854年創業のロイヤル・アッシャーは、この街で6代に継がれ、歴史と偉業を刻んできた名門ジュエラーだ。
![](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/1/9/-/img_1901412c748370bedd92486329d62c6e286903.jpg)
本社屋はその名も「DIAMANTSTRAAT(ダイヤモンド通り)」の突き当たりに、威風堂々とそびえ立つ。
右:本社前の「DIAMANTSTRAAT」のサインプレート。
聞けば、かつてそこに80を超えるダイヤモンド工房が軒を連ね、職人たちが技を極めていたという。その様を頂点から見守り、彼らを牽引していたのがロイヤル・アッシャーなのだ。
![](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/5/0/-/img_5088e69999ccc91ae8e6b46acd4dd435497248.jpg)
偉業といえば、まずは世界史上最大のダイヤモンド原石「カリナン」のカットを成功させたことだろう。1905年に南アフリカで発見されたそれは、なんと3,106カラット。
当時、隆盛を極めていた英国国王エドワードVII世に献上されるも、「ダイヤモンドは輝いてこそ」とカットを勧めたのが、3代目ジョセフである。
![](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/1/7/-/img_17aa8944a28b9c9c76a2e101aee51411171853.jpg)
彼は'02年に58面を持つ「アッシャー・カット」を開発して一世を風靡。'03年には997カラットの原石「エクセルシオー」のカットを成功させ、“世界一のカッター”と呼ばれていた。
ゆえに、“世界最大の原石のまま所有”を望んだ大英帝国国王とて、説得に応じたのであろう。
![](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/3/f/-/img_3f52945fd733b43fc9bf4688c73a8dc1458518.jpg)
こうして'08年、ジョセフは「カリナン」のカットに挑み、成功。
![](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/2/8/-/img_285afc405f68e49eee27963e6572bf37206330.jpg)
切り出されたダイヤモンドのうち、最大530.2カラットの「カリナンI世」は英国王室の王笏に、317.4カラットの「カリナンII世」は王冠に埋め込まれ、'53年に現英国女王エリザベスII世の戴冠式で披露された。
![](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/5/d/-/img_5de94fdb8673b1cc38bb5c26b8e53500193078.jpg)
「カリナンⅢ世」(94.4カラット)と「カリナンⅣ世」(63.6カラット)も当時は王冠に飾られたが、現在はブローチにデザインし直され、女王の胸元でしばしばその優美な輝きが目撃されている。
Edit, Styling & Text=Mami Sekiya
Photo=Kanji Ishii, Hirofumi Kamaya(cutout)
Assistant Edit=Mai Ogawa
Special Thanks=LEKKER BIKES, WOLKERS