この街で出会う美術品は個性派揃い。「これは!?」と気になる作品の前で立ち止まってみたい。

 謎が解ければ、遠い昔からアーティストたちに霊感を与え続けてきた、古代神話や聖書の奥深い世界がぐっと身近なものに見えてくるだろう。

 まずは、国立考古学博物館に収められている芸術作品から、「古代の秘密」を紐解いてみよう。

>> 第2回 ルネッサンスの謎
>> 第3回 バロックの不思議

 国立考古学博物館の収蔵品には世界的に有名な古代彫刻が少なくない。ポーズや場面設定に特徴的なものが多く、それぞれに独自の魅力がある。ユーモアあり、エロスあり、古代人たちのおおらかな感性をいっとき堪能しよう。

古代芸術の宝庫、国立考古学博物館

ファルネーゼの雄牛

みんなで寄ってたかって牛をいじめるのはなぜ? 《ファルネーゼの雄牛》 紀元前2世紀頃
いじめられているのは牛ではなく、手前に見える女性、テーバイの王妃ディルケだ。彼女に母親を虐待された男たちが、復讐のために荒々しい雄牛に王妃をつないで殺害する場面。この巨大な大理石の群像は、1546年にローマのカラカラ浴場跡で発見された。

「スパッカ・ナポリ」と呼ばれるナポリ旧市街地にほど近い国立考古学博物館には、イタリア屈指の古代美術コレクションが収められている。現在博物館に所蔵される古代作品は、主に2つのコレクションを母体としている。ひとつは、16世紀にファルネーゼ家が収集した、ローマで発見された古代彫刻群。もうひとつは、18世紀以降に発掘された、ポンペイをはじめとするナポリ近郊の古代遺跡からの品々だ。

 これらが博物館に収蔵されることになった経緯は、1735年にナポリ国王に即位したカルロが始めた計画と関係が深い。カルロ王の母はファルネーゼ家の最後の子孫エリザベッタ、父はブルボン家出身のスペイン王フェリペ5世だった。彼は、母方の一族から継承した莫大な美術コレクションを、自身が治めるナポリへ移送し始めたのである。

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photo:Kinta Kimura
supervision:Michiaki Koshikawa
text:Michiaki Koshikawa / Maria Fukada