街並みも、行き交う人も、街角のストリート作品に至るまで、パリはアートに溢れている。アーティストの生きた時間を彷彿させる個性的な美術館が毎年誕生する国、フランス。その空間に身を置くことで創作のパワーを感じさせる美術館を目当てに、旅に出よう。
没後半世紀を経て
公開されたアトリエ
●L'Institut Giacometti
(ジャコメッティ協会)
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人通りの少ないモンパルナスの小径に、控えめだが瀟洒なアールデコの装飾が際立つ一軒家がある。それが2018年6月に開館した「ジャコメッティ協会」と知らせるものは、小さなブルーの看板のみ。
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彫刻家アルベルト・ジャコメッティが足繁く通ったモンパルナスのカフェへの道や街の空気の密やかさを今も守るかのようにひっそりと佇む。
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ガラス製の重たい玄関扉を押し開くと、最初に目に飛び込んでくるのは作家のアトリエだ。
透明度の高い特殊ガラスで囲まれた20平方メートル足らずの小空間には、古びた木製家具の間に所狭しと坐像や立像の試作が並び、漆喰の壁に描かれた多数のデッサンがアトリエ全体にみなぎる創作への意志と熱意を包み込んでいるかのようだ。
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没後半世紀を経て公開されたアトリエは未だ作家の息吹を宿し、つい先刻までジャコメッティがそこにいたかのようなエモーションを呼び起こさずにはおかない。
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極端に引き伸ばした線のような独自の身体表現を、石膏の小作品で観るからこそ、作家の手の動きが感じられるかのよう。財団所蔵の約350の彫刻から選び抜いた未発表作品。アルベルト・ジャコメッティ《ケージの中の小像》1950年制作。
Text=Chiyo Sagae
Photo=Asami Enomoto