シャルドネの収穫“ヴェンデミア”は
なんと真夏の真夜中に行われる!

 シチリアの夏は、暑い! イタリア最南端、地中海に浮かぶ最大の島シチリアにはキラキラと輝く太陽がさんさんと降り注ぎ、日中の気温は40度を超えることもありますが、太陽の恩恵を存分に受けた肥沃な大地は、豊かな実りをもたらします。

 小麦、オリーブ、そしてブドウ。美味なシチリアワインの原料となるポテンシャルの高いブドウの収穫は、例年早くも8月上旬から始まります。

 シチリアの名門ワイナリー「ドンナフガータ」でも、毎年8月10日ごろに白ブドウ品種シャルドネの収穫、“ヴェンデミア”を開始。しかしその収穫が行われるのは、なんと真夜中。

 収穫後の劣化を防ぐため、グッと気温の下がる夜中に収穫し、ただちにワイナリーに運搬、搾汁するわけです。

 ペルセウス座流星群が出現するサン・ロレンツォ(8月10日)の夜、イタリアでは星空を眺める習慣があります。

 ドンナフガータでは、この日、収穫の見学と試飲を兼ねたイベント「カリチ・ディ・ステッレ(星のグラス)」を毎年開催。今年も約1500人の招待客と一般のワインラバーたちが集い、大盛況となりました。

 会場は、パレルモから約60キロ南下した内陸部に位置するコンテッサ・エンテッリーナ。

 シチリア島各地とパンテレリア島でテロワールを生かしたワイン造りを行うドンナフガータが所有する畑のひとつで、シチリア島南側に広がるシチリア海峡からの海風が届き、昼夜の寒暖差は20度以上にもなるため、古くからワイン生産が行われてきたエリアです。

 「カリチ・ディ・ステッレ」の夜には、ブドウ畑に囲まれたワイナリーと、そこに併設されたオーナーファミリーの夏の別荘の庭園が開放され、手入れの行き届いた美しい庭園の芝生の上で満天の星を眺めながら、ドンナフガータのワイン全種類を心ゆくまで……。

 ワイン好き、シチリア好き、夜空好きにはたまらない真夏の夜の夢、至極の一夜となります。

 ところで、ドンナフガータはイタリア語で「逃げてきた女性」の意味があります。

 18世紀末、ナポレオンの侵攻を恐れたナポリ・シチリア両王国王妃マリア・カロリーナが、ナポリから逃れて滞在したのが、ここコンテッサ・エンテッリーナ近郊のサンタ・マルゲリータ・ディ・ベリチェのお屋敷でした。その当時、王妃は近隣の住民から「ラ・ドンナフガータ」と呼ばれていたそうです。

文・撮影=岩田デノーラ砂和子