食材や料理を合わせる
マリアージュ・テイスティング
このお屋敷は実在し、19世紀末のイタリア統一期の激動の時代を描いた名篇『山猫』の作者ジュゼッペ・トマージ・ディ・ランペドゥーザが幼少時代に過ごした夏の別荘で、小説には「ドンナフガータ村」の「サリーナ邸」として登場。その外観は、ドンナフガータのフラッグシップワイン「ミレ・エ・ウナノッテ」のラベルにも描かれています。
そのほかドンナフガータのワインには、登場人物であるサリーナ公爵の甥、タンクレディや美貌の村娘、アンジェリカ嬢をイメージした「タンクレディ」「アンゲーリ」など、山猫からインスピレーションを受けたものも。小説を読むと、それぞれのブレンドの意味やフレーバーに妙に納得できるところもあり、ますます興味深く味わえます。
ちなみに、「ミレ・エ・ウナ・ノッテ」は、イタリア語で「千夜一夜」のこと。このワインもその名の通り、ひと口ごとにめくるめく夜語りの世界に引き込まれるような重層な味わいを楽しめます。
社名やワイン名の由来、イラストラベルに隠された意味など、知れば知るほど面白いドンナフガータのワインは、8月10日の一夜のみならず、シチリア西岸のマルサラにあるワイナリーでは、年間通して試飲体験が可能です。
いくつか用意された試飲プランには、シチリア特産の食材や料理を合わせるマリアージュ・テイスティングも。日常の合わせ方や意外な組み合わせ、ワインの味わいの広がりなど発見も多いテイスティング・プランです。
ドンナフガータは、マルサラでワイン造りを160年以上続けてきたラッロ家4代目当主の故ジャコモ・ラッロ氏が、ガブリエッラ夫人と共に、1983年に創設したワイナリー。独創的なネーミングやイラストラベルの採用アイデアは、すべてガブリエッラ夫人によるものです。
女性らしくシチリアらしく、細やかで自由な発想力や世界観は、5代目の娘・息子にしっかりと受け継がれ、その本領たるワインの品質維持向上はもちろんのこと、ワインとアートの融合など画期的な挑戦を続けています。
ワイン一本一本が紐解くシチリアの大地のストーリー。もしシチリアを訪れる機会があったなら、ぜひドンナフガータのワイナリーを訪れてみては? きっとガイドブック的ではない“シチリア”を体感できるはずです。
岩田デノーラ砂和子
2001年よりイタリア在住のライター/コーディネーター/通訳。現在はシチリア州パレルモ在住。メディアから個人旅行者までイタリア専門コーディネートチーム「La Vacanza Italiana」を主宰・運営。イケメン犬ボン先輩とヤラカシ系イタリア人の夫との日々を綴るBLOG「ボン先輩は今日もご機嫌」も大人気。イタリア関連書籍も多数手がけ、イタリアで5万部越えベストセラーの日本語版『I LOVE TOKYO』がただいま絶賛発売中!
文・撮影=岩田デノーラ砂和子