複雑な造形の巨大彫刻は
全長10.4メートル、重量約3トン
ジャポニスム2018開会式翌日の7月13日(金)、ルーヴル美術館 ピラミッド内で、彫刻家・名和晃平氏による新作彫刻《Throne(スローン)》展示が始まり、大きな注目を集めている。
「僕が美大生の頃、バックパッカーで見に来ていた場所なので、ここに自分の作品が展示されることが不思議です。信じられません」と率直な気持ちを語る名和氏に、制作意図やこの作品への想いを尋ねた。
日本人初となるルーヴル美術館ピラミッド内の特別展示でお披露目された《Throne》は、全長10.4メートル、重量約3トン。ステンレス構造にFRP(繊維強化プラスチック)の皮膜で造形した35のパーツで構成された、金箔貼りの“玉座”だ。
東洋の神事や祭事に登場し、江戸時代末に極めて発達した山車の形態を考察しながら、エジプトがその起源とされる金箔を使用し、最新技術を用いて作られた《Throne》には、東と西、太古と現在の文化・技術が融合している。
造形には、最新の3D造形システムを使用。
その3Dモデリングデータを基にロボットアームで全ての形を削り出し、形成する。表面の金箔は金沢産を使用し、京都の職人が名和氏のスタジオで貼ったものだ。
2011年、東京都現代美術館での個展で《Throne》という作品を初めて発表し、その時、「王権や権威は、現代にも姿を変えて存在しているのでは?」と考えたというという名和氏。
6年後の2017年4月には、銀座に建設された複合施設・GINZA SIXのオープンにあわせ、銀座蔦屋書店内にて、金箔に覆われた彫刻《Throne(g/p_ boy)》を発表。
その直後に、国際交流基金を通じてルーヴル美術館 ピラミッド内特別展示の企画・提案のオファーを受けた。
「ルーヴル・ピラミッドの中心にアートワークを提案するという、指名コンペのようなカタチでお話をいただきました。そこで、ルーヴル美術館という場所、ピラミッドという建築空間を考慮し、“浮遊する空位の玉座”、つまり、そこに誰も座っていない玉座をここに配するプランを作りました」
文・撮影=景山由美子