年間3000万人以上が訪れるアジア有数の観光都市、マカオ。市内には100軒を超えるホテルがあり、豊富な選択肢のなかから予算や旅の目的に合わせて柔軟なチョイスが可能です。

 昨今、大型IR(統合型リゾート)に併設のゴージャスホテルが次々オープンして話題となっていますが、今回は華やかさには欠けるものの、コスパの良さが光る、マカオで唯一のホテルマンの教育実習施設を兼ねた公営ホテル「ポウサダ・デ・モンハ(望廈迎賓館)」をご紹介したいと思います。

どんな宿泊施設?

かつて兵舎だったポウサダ・デ・モンハの建物。(C)IFT

 ポウサダ・デ・モンハは、観光業のプロフェッショナル人材を育成する公立の専門高等教育機関「旅遊学院(IFT)」のホテル学科に付属する施設です。

 将来、ホテルやホスピタリティ業界の第一線で活躍することを目指す学生たちが、こちらの施設を舞台にホテル運営の現場について学んでいます。もちろん、しっかり料金をチャージして宿泊させている以上、ゲストに迷惑がかかるような中途半端な運営ではなく、学生らは事前に基礎訓練を受けた上で実習に臨み、教員らが学生たちの様子をチェックし、必要に応じてサポートを提供しています。

レセプションでも実習中の学生さんがお出迎え。

 緊張のあまり、ぎこちない対応の学生さんがいることもあるかと思いますが、教育の一環ということで、温かく接していただくと、パフォーマンス向上につながるはずです。なお、客室数は20室となっており、十分にケアが行き届く規模となっています。

かつてポルトガル軍の兵舎だった空間

パティオの壁面が美しい「アズレージョ」(ポルトガルの彩色タイル)で彩られているなど、見どころもいっぱい。

 ポウサダ・デ・モンハはマカオ半島北部、中国本土とのボーダーに近いモンハの丘の頂上近くに建っています。モンハの丘には、ポルトガル陸軍がマカオの北側の防衛のため19世紀になって砦を築き、現在のポウサダ・デ・モンハの建物は1970年代初めに兵舎として建てられたものです。

 その後、ポルトガル軍が1974年に撤退。1979年にマカオ政府へと移管され、海外公務員用住宅を経て観光学校およびホテル学校の実習施設となり、1995年に旅遊学院が設立されると同時に、ホテルとして一般にも開放されました。

モンハの丘の頂上にある砲台跡。

 ホテルのすぐ近くにある丘の頂上部には、要塞だった頃の名残で砲台跡が残っています。ちなみに、公式ホームページによれば、施設名称の「ポウサダ」とは、ポルトガル語で「祝福された安息の場所」を意味し、ポルトガルでは宮殿や要塞といった歴史的建造物をリノベーションした宿泊施設を指す言葉としても知られます。

文・撮影=勝部悠人(マカオ新聞)