アラブ、ビザンチン、ヨーロッパが融合した世界でも稀有な芸術建築
世界遺産登録数、世界第1位のイタリア。2015年は、シチリア州の「パレルモのアラブ・ノルマン様式の建造物群およびチェファルー大聖堂、モンレアーレ大聖堂」が新たに登録され、さらにその数を増やしました。イタリアでは51番目、シチリア州では文化・自然遺産を合わせて7番目の世界遺産となります。
イタリアなのに「アラブ・ノルマン様式」とは? なかなか聞き慣れないワードですが、これは、東西文化の交流地点として栄えた、シチリアならではの歴史の賜物。ビザンチン、アラブ、ヨーロッパの3つの文化が共存した、奇跡とも言われる時代に誕生した世界でも稀に見る建築様式です。
地中海のほぼ真ん中に位置するシチリアは、紀元前8世紀頃、古代ギリシャ人やフェニキア人が入植してから約3000年もの間、ほぼ他国による支配を受けてきた島。紀元前3世紀には古代ローマの手に渡り、5世紀にはヴァンダル王国、続いて東ゴート王国、そしてビザンチン帝国と目まぐるしく支配者が入れ替わります。
9世紀にはイスラム帝国が侵攻。10世紀半ばには全島が征服され、イスラム帝国の首長国となったシチリアには、当時最先端の知識や建築・農業技術を誇った当時のアラブ人たちによって新しい文化がもたらされました。首都がおかれたパレルモは、300余りのモスクが立ち並ぶ大都市に発展します。
右:初代王ルッジェーロ2世がキリストから戴冠する場面を描いたモザイク。
そして、11世紀にノルマン人の南イタリア侵攻によって、1130年にノルマン・シチリア王国が成立すると、初代国王となるルッジェーロ2世の采配により、それまでに築かれた文化を引き継いだ、独特の融合文化が誕生。首都パレルモとその近郊に、新スタイルの建築物が続々と建設されたのです。
文・撮影=岩田デノーラ砂和子