シチリアで陶器の町としても有名な、世界遺産カルタジローネ
イタリア各地、とくに南イタリアの教会や町並みを飾る陽気な色合いのタイル、いかにも地中海をイメージさせるカラフルな食器……。これらは、イタリアを代表する陶器「マヨリカ焼き」とよばれるものです。お土産に買って帰りたくなるもののひとつですが、「マヨリカというくらいだから、本当はマヨリカ島で作られたものなのでは?」と思ったことがある人……もいるかもしれませんよね。
マヨリカ焼きには、1000年以上もの歴史があります。もともとはイスラム圏で作られていた陶器で、イスラム勢力の拡大とともにスペインに渡り、そこで焼成された陶器が、マヨリカ島を経由してシチリア島へ輸出されていました。そして、古代からすでに陶器作りが行われ、高い技術があったシチリア島でも製作に成功。イタリア独自のデザインを加えたオリジナルの陶器がシチリアを中心に作られ、イタリア各地に広まっていったのです。ルネサンス期には、イタリア各地で独自の色や技術が開発されて発展。より芸術性の高いマヨリカ焼きが誕生しました。
右:頑張って上り切ると、爽快な景色を一望できる。カルタジローネは世界遺産にも登録されている
ファエンツァやオルヴィエートなどなど、イタリア各地に陶器の町がありますが、最初にスペインからテラコッタに錫釉を施す技術が到着したのが、シチリアのカルタジローネ。先史時代から陶器が製造されていた町で、イスラム帝国下の時代には「カルタ・アル・ジラン」(壺の丘)と呼ばれるほどの多くの工房がありました。現在も歴史を受け継いだ工房が町じゅうに点在。美しいバロック様式の町並みを飾るマヨリカ陶器の階段「スカリナータ・ディ・サンタ・マリア・デルモンテ」は、町のシンボルになっています。
また、シチリア島にはカルタジローネのほか、陶器の町がもうひとつ。シチリア島北岸に位置するサント・ステファノ・ディ・カマストラが、やはり古代からの陶器作りを伝承する陶器の町として知られています。これらの町の工房で作られる陶器はもちろん、それぞれに修業をした職人が開くお店もあり、シチリア島のたいていの町には、陶器店が見つかります。そして、どんなお店にも必ずあるのが、男女の顔を模した「顔鉢(と個人的に勝手に命名しています)」。これはいったい、何をあらわしているのでしょうか?