19世紀に開発された貴族の別荘地モンデッロ

パレルモは海に面した港町。ゲーテがナポリから到着した旧港は、現在ヨットハーバーになっている

 シチリア島北岸にある州都パレルモは、かつてこの地を訪れた古代ギリシャ人に「パノルモス(すべてが港)」と呼ばれたことが、その名の由来となった街。地中海に沿って広がった街のどこにいても、爽やかな海風(ときおり熱風)を感じることができます。路地の間から垣間見える、大型客船や定期フェリーが行き交う青い海。旧市街には、ヨットハーバーや一面芝生の海浜公園もあり、ジェラート片手にのんびりとお散歩するのにはうってつけ! ですが、実は徒歩圏内には、「入れるビーチ」がありません。

 さて、海に入りたくなったら、パレルモっ子はどこに行くか? 市街北端にそびえるモンテ・ペッレグリーノ山の向こう側、モンデッロに向かいます。モンテ・ペッレグリーノ山麓に広がる森林公園、ラ・ファヴォリータを抜け、南国の木々が作るガレリアをくぐれば、そこがモンデッロ。

モンテ・ペッレグリーノ山からモンデッロを望む。リバティ様式の邸宅が並ぶ別荘リゾート

 モンデッロは、もともとは小さな漁村でしたが、パレルモに集まるヨーロッパの王侯貴族・ブルジョア階級のための「別荘地」として19世紀末に開拓されたエリアで、現在も、当時流行していたリバティ(アール・ヌーヴォー)様式で建てられた瀟洒な邸宅が建ち並んでいます。

 古き良き時代の面影残す閑静な街並みの先に現れる、青く透明な地中海。緩やかな弧を描く白砂のビーチの両端には、モンテ・ペッレグリーノ山とカポ・ガッロ岬がそびえています。変化に富むシチリア島らしい海岸線の風景を望む白砂のビーチは、開拓当時に訪れたブルボン王家のフェルディナンド王に「地上の天国」と称されたほどの美しさを誇ります。

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