パリから列車でわずか数時間。豊かな田園風景が広がり、可愛い町や村が点在するロワール地方。フランスの原風景ともいうべき美しい光景にあふれるこの地方の最大の見所は、世界遺産にも登録されている古城の数々。

 観光名所になっている壮大な古城のほかにも、ロワールにはたくさんの美しい城が点在する。なかには、美味しい料理とフレンドリーなおもてなしで評判のプチホテルになっているところも。貴族が暮らした空間での憧れの滞在は、この地方を訪れるならぜひとも体験してみたい。

» 第1回 折り目正しい古城のおもてなし「シャトー・ド・ノワゼ」
» 第2回 1ツ星シェフのいる13世紀の館「シャトー・ド・プレ」

◆ Fontevraud L'Hôtel(フォントヴロー・ロテル)

王国ゆかりの修道院ホテル

中世にイングランドからフランスにかけての広大な地域を支配したプランタジネット朝の王立修道院だったフォントヴロー。国王ヘンリー2世らの墓所もある。

 12世紀に建てられたフォントヴローは、欧州最大の修道院。700年近くにわたり信仰追究の聖地であったが、フランス革命により閉鎖。以後、ナポレオン時代から1963年までは刑務所として使われ、異才の作家ジャン・ジュネが収監されていたことでも知られる。この波乱の歴史を刻んだ中世の建築が、このたび長きにわたる修復を終えてホテル、レストランを併設する文化スポットとして生まれ変わった。

ロマンティックに美食を堪能できる夜のダイニングエリア。

文=矢野詔次郎
撮影=橋本 篤