パリ、そこはフランスのガストロノミーの粋が集まり、しのぎを削る場所。超ラグジュアリーホテルで堪能する、最上の美食と極上のホスピタリティ。

» 第1回 秘密のカーヴで杯を交わす 「フォーシーズンズホテル ジョルジュサンク パリ」
» 第2回 女性1ツ星シェフを訪ねて 「プランス・ドゥ・ガール」

Saint James Paris (サン・ジェームス・パリ)

凱旋門とブローニュの森にほど近い閑静なエリアに立つ邸宅。パリ唯一のシャトーホテルの門をくぐるとパリの喧噪とは別世界。

都会のオアシスで楽しむ気鋭の女性シェフの料理

 パリで最も幅の広い美しい大通り、アヴニュー・フォッシュ。ここは、ロスチャイルドやオナシスが館を構えた、緑をたたえた優美な館が立ち並ぶ高級住宅街だ。そんな大通りのすぐそばにサン・ジェームス・パリが佇んでいる。門をくぐると、バラ園とハーブ園からよい香りが鼻をかすめ、小鳥のさえずりが耳をくすぐり、茂った緑の陰に、ホテルキャットの黒猫ピルーのしっぽが見え隠れする。パリの喧噪から離れた、ここは都会のオアシスだ。

 大きな窓から外光が心地よく射し込むダイニングは従来、ホテルゲストと、このホテルを拠点にするプライベートクラブのメンバーのみに許された憩いの空間だった。それが2年前から、ディナータイムは一般客にも開放。ル・ブリストルやオテル・ドゥ・クリヨンなど名パラスで修業を重ねた女性料理人ヴィルジニー・バスロ氏をシェフに迎えてスタッフも一新。正統フランス料理や彼女の故郷ノルマンディーの料理を軽やかに美しくアレンジした料理は、今年のミシュランで1ツ星を獲得し、この美しい館を美食ホテルに仲間入りさせた。

左:シェフの、ヴィルジニー・バスロ氏。
右:ノルマンディー地方の舌平目料理をガストロノミーレストランらしく美しく解釈。
左:カニと根セロリを大根の薄皮で巻いた、フレッシュ感あふれる前菜。
右:鮮やかな色が美しいグレープフルーツのタルト。

撮影=村松史郎
文=加納雪乃