日本で最も古い国立公園のひとつが、瀬戸内海だ。最も広い国立公園も、やはり瀬戸内海。広域にわたって美しい景観が広がるこの地をフェラーリ・カリフォルニアTで駆け抜けた。
栄華の名残をとどめる、いまは静かな港町
鞆の浦が古くから海上交通の要所として栄えたのには理由がある。瀬戸内海は、満潮と干潮で潮流が逆転することで知られる。その境目が、瀬戸内海のほぼ中央にあたる鞆の浦沖なのだ。潮流と風を頼りに航海した時代は、鞆の浦で潮の流れが変わるのを待つ必要があった。それゆえ、潮待ちの港として賑わった。
江戸時代に交易で成功した豪商たちが闊歩したであろう辺りに、フェラーリで足を踏み入れる。その立地ゆえ、鞆の浦を舞台にした歴史的な出来事も多い。例えば紀州藩船と衝突した海援隊のいろは丸は、鞆の浦に曳航される途中で沈没した。鞆の浦に上陸した坂本龍馬は、ここで紀州藩と談判した。
豪奢な生活と、ドラマティックな歴史。なんの接点もなさそうな鞆の浦とフェラーリであるけれど、この2点において両者が結びついた。
撮影=柏田芳敬
文=サトータケシ