3000年前の化石からも発見されたシチリア原産の黒豚
地中海に浮かぶ恵みの島、シチリア。マグロやカジキ、ウニに赤エビ、豊かな海がもたらす海の幸、輝く太陽と豊穣な大地に育つトマトやオリーブ、小麦、ブドウ……。シチリアの美味を数え上げれば枚挙にいとまがありませんが、そういえば、肉類が出てきませんね。海のイメージが色濃いシチリアで、はて、美味なお肉はあるのかしら?
その答えは、もちろん「Si!(Yes!)」
俗世から隔絶されたかのような山奥に、ひっそりと息づく幻の黒豚、「スウィーノ・ネーロ・ディ・ネブロディ(ネブロディ山脈の黒豚)」が、その筆頭に挙げられましょう(パレルモの裏山に生息する絶滅危惧種チニサーナ牛などもいたりしますが、それはまたいずれ……)。ネブロディ山脈は、シチリアの北東、世界遺産エトナ山の北側に広がる山地です。
ネブロディ山脈の黒豚は、このエリアに3000年以上も前から生息していたと言われる原産種。当時の化石遺跡からもその骨が発見されるなど、希少価値の高い豚ながら、ほかの原種同様、近年まで絶滅の危機に瀕していました。
しかし、国際連合食糧農業機関からの警告によって地元業者が動きだし、メッシーナ大学の研究機関の協力のもと、15年ほど前から純血品種の飼育が再開。現在、約2000頭にまで持ち直してきているものの、まだまだ数の少ない黒豚ちゃん。同じ島内にいながら西岸のパレルモでさえ、なかなかお目にかかれない幻の黒豚なのです。
右:炭火焼の脂身は一切臭みもなく、透明でサラサラ!
さて、そんな黒豚ちゃんに会いに、ネブロディ山脈で黒豚を飼育するボッレーロ兄弟社を訪ねました。2014年のスローフード協会主催ヨーロッパ会議で、数あるスローフード認定食品のなかからイタリア代表として選ばれた名門生産者のひとつです。飼育場に併設のトラットリアで、垂涎必至の黒豚料理が食べられることでも知られています(←もちろん、目的はこれ!)。
文・撮影=岩田デノーラ砂和子