エキシビションの後半では、壮大なキャビネットやホログラムも
さて、エキシビションもいよいよ後半。6つめのギャラリーにあたる「Cabinet of Curiosities」は、この回顧展最大の見どころ。四方の壁は、高い天井の上の方までびっちりと棚がはめ込まれ、この部屋だけで120ものピースが展示されているのです。今回のスポンサーでもあるスワロフスキーとコラボしてデザインしたクリスタルメッシュのフード付きトップや、帽子デザイナーのフィリップ・トレーシーとのコラボによる七面鳥の羽根をハンドペイントした蝶のヘッドドレスなど、マックイーンがさまざまなデザイナーと一緒に制作した作品も多数。27の大小のモニターに映し出されるキャットウォークも見逃せないので、時間にゆとりをもってのぞみたい部屋です。
「Cabinet of Curiosities」の展示。(C)Victoria and Albert Museum, London
「Cabinet of Curiosities」の展示。中央で回っているのは、1999年春夏のショーにおいて、ステージ上で工業用ロボットによってスプレーペイントされたドレス。
左:フィリップ・トレーシーとのコラボによる蝶のヘッドドレス。(C)Model: Alana Zimmer, (C)Anthea Simms右:「Cabinet of Curiosities」のギャラリー中央で回っているドレスがペイントされた時の模様。(C)Model: Shalom Harlow represented by dna model management New York, Image: Catwalking
次なる「Pepper's Ghost」にある展示品はただひとつ。いつまでも立ち尽くして凝視してしまうのが、大きなピラミッド型のケースのなかで、映画「シンドラーのリスト」のサウンドトラックをバックに、天女のようにゆらゆらと漂うケイト・モスのホログラムです。2006年にパリで発表された秋冬コレクションのフィナーレを飾ったホログラムで、マックイーンの劇場的な魅力が存分に発揮されています。
ケイト・モスがホログラムのなかでまとっているドレス。
その後に広がる「Romantic Exoticism」では、その名のとおり、アフリカ、中国、インド、トルコ、日本などのテーマやスタイルを取り入れた作品を、「Romantic Naturalism」では、動物の角や革、羽毛、貝などを多用した作品を紹介しています。
「Romantic Exoticism」の展示。(C)Victoria and Albert Museum, London
「Romantic Naturalism」の展示。(C)Victoria and Albert Museum, London
このエキシビションのフィナーレを飾るのは、マックイーンの生前最後のコレクションとなった2010年春夏の「Plato's Atlantis」。ダーウィンの「種の起源」にインスパイアされた、人間の進化ではなく退化を核とした、近未来的なデザインが中心です。
「Plato’s Atlantis」の展示。(C)Victoria and Albert Museum, London
駆け足でご紹介しましたが、アレキサンダー・マックイーンのデザイナー人生を一望できるこのエキシビション、とにかく見るものがいっぱいですので、どうぞたっぷりと時間をとって行かれてみてはどうでしょうか。
エキシビションのガラ・パーティーには多くの有名人が集まった。左:コリン・ファース夫妻も。(C) Dave Benett Getty Images for Victoria and Albert Museum
右:アレキサンダー・マックイーンのクリエイティブ・ディレクター、サラ・バートンとケイト・モスのツーショット。(C) Dave Benett Getty Images for Victoria and Albert Museum
Alexander McQueen: Savage Beauty
会期 2015年8月2日まで
会場 Victoria and Albert Museum
所在地 Cromwell Road, London SW7 2RL
開場時間 10:00~17:45(金曜日のみ~22:00)
料金 16ポンド
URL http://vam.ac.uk/savagebeauty
安田和代(KRess Europe)
ロンドンを拠点とする編集プロダクションKRess Europeの代表。現在、ヨーロッパでの生活をテーマとした初めての電子書籍を刊行すべく、準備中。
文・撮影=安田和代(KRess Europe)