一皿ごとに感じる、料理に対するあくなき追求

「スズキのグリル」。色とりどりの季節の野菜と一緒に。

 メニューは時折更新されており、その都度新たな試みに挑戦している。「61℃サーモン」は、真空調理法でじっくり時間をかけて調理されたサーモンだが、これにトルコの田舎の伝統パスタ「エリシテ」をセットで添えることで“土仏”(=トルコとフランス)が折衷した美味しさが絶妙だし、「スズキのマリネ」はアボカドと和えることで、あっさり感とまったり感のコラボが味わい深い。さらにスウィーツでは、プロフィトロールのシュー生地の外側にクッキー生地を加えてカリッと仕上げ、砕いたクッキーとアイスクリームと合わせるなど、「どうやったら美味しくなるか?」という、料理に対するあくなき追求が一品一品に感じられるラインナップになっている。

左:スズキのマリネをアボカドと和え、アッケシソウサラダと共にいただく冷菜。そのあっさり感が、日本人好み。
右:「プロフィトロール・アイス」。一見クッキーのようで食感もさっくりしているが、中を見るとシュー仕込み、というレベルの高いスウィーツ。
高い天井が開放感をもたらすレストラン内部は、落ち着きのある空間。

 食材については原産地主義で、特にオリーブオイルやチーズはトルコ国内の各産地から取り寄せており、野菜は季節ものだけを使っている。国産ワインの品ぞろえも充実しているので、ちょっとハイレベルでゴージャスなランチをいただくにはぴったりのスポットだ。

 これまで“丁稚奉公”的なシステムでシェフが養成されてきたトルコでは、トルコ料理以外の海外メニューが完全に発展途上だった。ところがこのMSAの開校(2004年)と共に、イスタンブールの料理界全体がレベルアップしたと言っても過言ではなく、今やシェフは人気の職業にもなっているほど。そんな重要な役割を担ってきたMSAのレストラン部門、この夏には高級ホテル、チュラーンパレス・ケンピンスキー内で約2カ月間のポップアップ(期間限定)・レストランを立ち上げるなど、独立したレストランとしても人気を集めている。

MSA:Okulun Mutfağı(オクルン・ムトゥファーウ)
所在地 Maslak Mah. Maslak Meydan Sok. No:1,
Beybi Giz Plaza B Blok No:123-134, 136, Şişli İstanbul
電話番号 +90-212-290-3560
営業時間 8:30~10:30(朝食)、12:00~15:30(ランチ)、15:30~17:00(スウィーツ&ティータイム)
定休日 土・日曜日
アクセス 地下鉄M2線「İTÜ Ayazağa」下車
URL http://www.msa.com.tr/campus/okulun-mutfagi.aspx

安尾 亜紀 (やすお あき)
イスタンブール在住。イスタンブール大学大学院女性学研究所卒。女性誌や料理誌、報道関係まで幅広い分野でライター・コーディネーターを担当。トルコの「おいしい・楽しい・新しい」を中心に、All Aboutトルコ・イスタンブールでも情報発信中。

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文・撮影=安尾亜紀