昨今ブームの修道会系アポセカリー・コスメ

 日本で人気が高いサンタ・マリア・ノヴェッラ薬局の商品もドミニコ修道会の調合レシピがもとになっているように、どの修道院にも時代によって修正を加えながら受け継がれてきたオリジナルの薬草調合法(レシピ)が存在する。植物の効能を生かして治療を施す(体を癒す)方法は、古代文明時代から存在するが、薬草学が飛躍的に発展を遂げたのは中世の修道僧たちの功績によるものが大きい。単独ではさほど効能がない草花でも他の植物とかけ合わせたり、調合する分量によって思わぬ効果を生み出すことがあるという。外界と一線を画す修道院の中だからこそ、研究に没頭し、大きな成果を生むことができたのだろう。

消化を助ける薬草酒(右)は修道院の定番商品。100%修道院で製造される地ビール(左)はイタリアでも珍しい品だ。
左:広大な敷地のトレ・フォンターネ修道院内。
右:散歩を楽しみに訪れてもいい。

 修道僧たちの日常は昔に比べて今ではずいぶんモダン化しているが、本来、修道院の生活は自給自足である。トレ・フォンターネ修道院でも、外部の人手を借りながら、今なお修道僧たちによって農業が営まれており、穫りたての青果物が週3回(火木土)、直売所で販売されている。ハーブや果実類は加工品として利用されることが多く、なかでも人気があるのはそれらを原料につくられるコスメ商品だとか。代々伝わるレシピを元に本格的なビジネス(?)に乗り出したトレ・フォンターネ修道院だが、スタートはまずまず好調のよう。昨今の修道会系アポセカリー・コスメブームを追い風に今後ブレイクする可能性はなきにしもあらずだ。

左:イタリアで人気のある修道会系のアポセカリー・コスメ。石けん(3.50ユーロ)、フェイスクリーム(14.50ユーロ~)。
右:お土産としても喜ばれそうな修道院チョコ。パッケージが可愛らしい(3.50~6.70ユーロ)。
ひっそりと落ち着いた佇まいの教会内部。日曜の朝はミサが行われる。

トレ・フォンターネ修道院 (Abbazia delle Tre Fontane)
所在地 Via Acque Salvie,1 Roma
電話番号 +39-06-540-1655
URL http://www.abbaziatrefontane.it/
☆修道院内ショップ 9:30~13:30/15:30~19:30 (年中無休)
☆修道院青果物直売 (入口Via del Tintoretto 220) 9:00~12:00 (火木土のみ)

村本幸枝 (むらもとゆきえ)
イタリアでは撮影コーディネートを、日本では東京・中央区で日伊文化交流サロン「アッティコ」を主宰。在伊歴20年ちょっと。現在、年の半分ずつをイタリアと日本で過ごしている。

日伊文化交流サロン「アッティコ」:http://www.attico.net/

Column

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文・撮影=村本幸枝