いまなお事故物件に住み続ける理由
![事故物件ではなく、立派な社内某所である。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/b/8/1280wm/img_b82b9ecbba8b9be2c1b8759841feec957958496.jpg)
――いまなお事故物件に住み続けるのも、よりインパクトの強い体験を期待してのことでしょうか。
インパクト……そうですね。期待される感じのインパクトとは違うかもしれませんが。どれだけ陰惨な事件や、悲惨なことが起こったかというより、なぜかそこに住むと精神に異常をきたすとか、必ず死ぬとか言われている物件には、住んでみたいですね。
本当に自分もおかしくなるのか、確かめたいんです。でも、意外とそういう物件には住めていないんですよ。住みたいと思って問い合わせても、募集をやめていたり、別の人が入ってしまったりで、タイミングが合わない。
![異界に引きずり込まれそうになる。タニシ氏は既に「向こう側」なのか。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/b/4/1280wm/img_b4ca6d081f19a949f830736dd1f8c4e219299500.jpg)
――何かに守られているのでしょうか。神仏とか、守護霊とか。
それを信じてしまうと、検証の意味がなくなります。そんな見えない力に頼るより、自分でちゃんと検証して、恐怖を乗り越えたいんですよ。事故物件でも、防犯・防災意識をちゃんと持って、普通に楽しく暮らしていれば、恐怖に飲み込まれたり、死に引っ張られることはないと思っています。一方で、想定外の出来事を期待してもいるわけですが。
――わからないことは自分で確かめてみたいという気質は、もともとですか。
そうですね。事故物件も最初は恐いな、嫌だな、って思っていましたが、当時は仕事もなかったし、誰もやってないから面白そうだなって。霊のせいとか、事故のせいとか、そういう思い込みみたいなものを取り外していくと、怪談がぶち壊しになってしまいますが、ぶち壊したうえでちゃんと恐いものを探しています。
2024.08.10(土)
文=伊藤由起
写真=志水 隆