この記事の連載

箸にも棒にも掛からないバイト生活の末につかんだチャンス

――コネもなく東京に出てきて、芽が出ない時期が続いたわけですよね。「もういいや」とあきらめたり、自暴自棄になったりすることは一度もなかったと?

 意外に……と自分でも言うのもなんですけど(笑)、グレもしなかったんですよね。僕みたいにアーティストを目指して地方から東京に来ていたら、もしかしたらグレる人も多いのかもしれないけど……。

 お話したように、WATWINGのオーディションに受かる前までは、本当に箸にも棒にも掛からなくてひたすらアルバイトをしていた生活だったんです。「何歳までにデビューしてこうなりたい」という具体的な目標も特になく、「いや、何とかなるだろう! デビューできるだろう」と、何の根拠もない自信だけがありました。というか、今思うと自分に聞かせていたのかもしれないです。だから「俺、ずっとこのままだったらどうしよう」みたいな不安も不思議となかったんです。よく言えば前向きに夢を信じていたんだと思います。

――自分を信じることは大切なことだと思います。ちなみに、ダンスは今のレベルまでどう昇華させていったんですか?

 メンバーのみんなのおかげです。みんな、本当にすごく上手いんですよ! 特に希空は僕のダンサーの師匠です。希空はどんな複雑な振りでも、「これちょっと教えて、覚えて」と言ったら、10分も経たずに自分のものにできるほど。そうしたみんなの上手いダンスを見て、「こうすればいいのか」と理解して必死に練習しました。

 あと僕たち、定点カメラでダンスを見せるコレオ動画というのをYouTubeにあげているんですね。練習のときも同じように定点で録画するんですけど、皆が上手すぎて「俺の動き気持ち悪いな」と自分で比較してわかっちゃう。改善点をひとつひとつ携帯にメモして次の練習に生かす、というのを心がけてずっとやっています。

――めげずにやられて、努力を重ねて進化しているわけですね。

 いえいえ、全然! 自分、めげてます。新曲の振付のときには「うわぁ、もうできない!!」と言ったこともありますし、泣いたこともあります。できないと悔しい。そんな自分に、メンバーは「ぐずぐず言うなよ」と見放すんじゃなくて、やさしく見守ってくれるんです。だからなんとか続けられるのかな。

2024.02.21(水)
文=赤山恭子
撮影=佐藤 亘