この記事の連載

相手への不満が少なすぎて、「こうして」と頼むことがない

――生活する上で、「もっとこうしてほしいな」と相手に感じたらどう伝えているんですか?

kame 私は不満がないので、そういうことを伝えたことはありません。無理やり1つ挙げるとしたら、「使ったお皿はちゃんと水につけて」くらい(笑)。私たちのルームシェアには1つだけルールがあって、それがお皿洗いは私が、掃除はぼっちゃんが担当すること。お皿が水につかってないと汚れが落ちにくくなるから、自分の機嫌が悪い時に見つけるとイライラすることも。でも彼女がたまたま忘れているだけってわかっているから、伝えてはいないですね。

 それに、「もっとこうして」と感じることは、家事の負担が大きいのでぼっちゃんの方が多いはず。例えば、彼女は早起きだから、ごみ捨てをほとんどやってくれるんです。「いつもごめんね。今日こそ、缶のゴミを捨てようと思ったんだけど。できなかった」と私が伝えると、「やろうとしていたの、伝わっていたよ」と返してくれます。

 でも、彼女から一度だけ「不満がある」と声をかけられたことがあって。身構えていたら、「お皿を洗った後、シンクの縁を拭いてください」って。「それしか不満はないです」と言われて、ほっとしました。

大学中退を親に相談。「決めたのならやめていいよ」

――漫画には、kameさんが上京するきっかけになったことも綴られています(上巻vol.11)。大分の芸術高校から女子美術大学(以下、女子美)へ進学後、中退されたんですね。

kame そうです。アートディレクターの野田凪さんのファンで、彼女が女子美出身だったんです。憧れて入学したんですが、学生の美術に対する捉え方にギャップを感じてしまって。大学へ通ううちに、「アルバイトをしながら個展をやった方が、アーティストへの道のりは近いかも」と感じたんです。

 母に相談したら「時間がもったいないから、中退を決めたのなら早くやめなさい」と後押しされました。結局、女子美には1年も通わずにやめてしまいましたね。

――子どもへの理解があるお母さんですね。憧れのイラストレーターさんはいるんですか?

kame 本秀康(もとひでやす)さんです。高校生の時にヴィレッジヴァンガードで本さんの作品と出会ってから大好きで。イラストも漫画も描けて、かわいい世界観だけど、どこかシュールな作風に憧れています。

タトゥーシールやエコバッグなどオリジナルグッズの制作も

――書籍『“運命の出会い”を探しに! とっておき韓国雑貨ガイド』(KADOKAWA)ではイラストを担当されています。韓国好きのご縁で決まったんですか?

kame そうです。本を監修したnatsuyoさんは、高円寺で韓国雑貨を扱う「雑貨屋PKP」の店主さんで、最初は「韓国雑貨を扱うかわいいお店ができたから行ってみよう」と通っていたんですけど、そのうちに自宅へ遊びに行くくらい仲良くなって。そうしているうちに「今度韓国雑貨の本を出すから、イラストレーターとして推薦しておいたよ」って声をかけてくれました。

――素敵です。そのほかには、個人でグッズを販売されていますよね。あれはどういう経緯で作ったんですか?

kame 自分が欲しいものを作って、「好き」って言ってくれる人に使ってもらいたいなと思って制作しています。前は手作り市に出したりもしていたんですけど、コロナ禍以降参加してなくて。今は自分の展示や通販で販売しています。8月10日(木)〜14日(月)に高円寺のギャラリー「SUMMER of LOVE(サマーオブラブ)」で個展をするので、その時も持っていく予定です。

2023.06.09(金)
文=ゆきどっぐ
撮影=榎本麻美