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「Nipponキュイジーヌ」をいよいよ実食!

 この日のコースの一品目は、牡丹海老のフリットと、パリパリとした食感が楽しい竹炭とバッカスチーズのチュイル。アップサイクルの考えから、チュイルには海老の殻も使用され、より一層複雑な旨味を与えていました。

 そこで気になるのが、このラグビーボールのような器ですよね。

「実はこれ、ホテルを建設する際に出てきた埋まり木を再利用したものなのです」(星のや東京スタッフ)

 酒井家の屋敷の木材が炭化して残っていたのだそうです。一つの器から大手町の歴史を感じられるとは、粋な演出ですよね。

 続いては、浜田シェフのスペシャリテ「五つの意思」。

 大理石にずらりと並べられた料理の数々は、それぞれ五味(酸味・塩味・苦味・辛味・甘味)を表現しています。

 今回は左から、酸味(桜鱒のルーロウ)、塩味(春キャベツのスープ)、苦味(蛍烏賊のコロッケ)、辛味(馬肉のタルタル)、甘味(桜餅)のラインナップ。

 どれもキラキラして宝石のように美しく、食べるのがもったいなくなってしまうほど。
この一皿でコース仕立てになっているので、左から順にいただきます。

 大理石ごと手に取りひと口でいただくと、それぞれの風味が口いっぱいに広がります。お料理によって石の温度も変えられており、丁寧なお仕事に感銘を受けました。

 中でも印象的だったのは、最後にいただいた甘味の桜餅。お餅の中には鯛のそぼろが入っており、桜餅のやさしい甘味がより深く引き立てられていました。

2023.05.01(月)
文=磯村実穂