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客室数をしぼった小さな宿だからできる 心尽くしのもてなしと出来立ての料理

 夕食は個室のお食事処でいただきます。先付、前菜、煮物に揚物といった会席形式ですが、温泉旅館でありがちな冷めた料理が数多く並ぶものではなく、提供の仕方も料理もひと工夫がこらされています。

 食事のスタートは季節の彩り「球型三段重」。白い球体の蓋を開けると三段の器になっていて、先付、前菜、季節の煮物が一段一段出てくる楽しい趣向。お造りは仙台港直送の旬魚が並びます。今夜の揚物は感動的なほど肉厚でジューシーな椎茸の天ぷら。そして、フカヒレ入り茶わん蒸しにメカジキのテールの煮つけと、温かいお料理が一品ずつ運ばれてきました。

 お造りや山菜など、旬の地のものをふんだんに味わった後に登場するのは、地元産のお肉。プランによって異なりますが、A5ランクの仙台牛をすき焼きにしたり、陶板焼きにしたり。カジュアルなプランでは、伊達桜ポークや森林どりなどがいただけます。

 席についてから運ばれるピッと角が立ったお造りに、アツアツの天ぷら、作り置きではない出来立ての料理が味わえるのがこの宿ならではのおもてなし。あったかい雰囲気で接してくれる仲居さんの、つかず離れずの距離感もちょうどよく、小さな宿だからこその丁寧な心配りで気持ちのいい時間が過ごせます。

 朝ごはんは、胡麻入りの味噌を青じそで包んで揚げた鳴子名物「しそ巻き」など山の素朴さを感じる料理を中心に、湯豆腐や焼きサバなどが並びます。少量ずつ、品数多くおかずが揃うので、ごはんを何杯でもおかわりしたくなるほど。

 1階のフロント横のスペースにはモーニングコーヒーのセルフサービスも用意されていて、客室に持ち帰ってゆっくり飲むこともできます。

2023.02.18(土)
文=嶺月香里
撮影=橋本 篤