古沢 有難いですけど照れくさいですね。でもみんなで作っているものですから。

 有働 ちなみに演出統括の加藤拓は私と(NHK入局)同期です。

 古沢 非常に助けられています。制作統括の磯智明さん、加藤さんと3人で企画を練りました。主人公の家康役に松本潤さんの名前を挙げたのは加藤さんでしたね。

 有働 オファーがあったのはかなり前の時期だったんですか。歴史物はリサーチにも時間がかかるでしょうし。

 古沢 オンエアの3年前くらい、2020年だったと思います。

 有働 NHK側がどうアプローチしてきたのか、気になります。

 

 古沢 制作統括の磯さんが人伝に僕のメールアドレスを聞いて連絡してくださって。会ってみたら「23年の大河を書きませんか」という話で、「直近の作品と被らない戦国時代を扱えるタイミングなんですが、好きな武将や描きたい歴史上の人物はいますか」と。

 有働 そんな感じなんだ。あらかじめ主人公が決まっているものだと思っていました。それで古沢さんが家康を選ばれたわけですね。

ウクライナ戦争の今、戦国時代を従来のように描くのは厳しい

 古沢 家康には魅力を感じていましたが、ただ家康を賛美したいわけではなくて。1年間どんなドラマだったら面白いかを考えたときに、家康公の人生をお借りしたいなと。戦国時代の面白さは、常に死と隣り合わせで生きるか死ぬかの究極の選択を迫られること。毎回ハラハラドキドキするようなサバイバル物語になるなと思ったんです。

 有働 早速、第1話のタイトルが「どうする桶狭間」ですもんね。いまはウクライナ戦争が長期化し、日本も物価高など先行きの見えない世の中ですが、意識されますか。

 古沢 意識せざるを得ないですよね。長らく戦国時代って、誰が天下を取るのか、ロマンありきで描かれてきました。でも、僕らは今、街に爆弾が落ちたり、地下シェルターで子どもが泣いている姿を、携帯ひとつで身近なこととして感じられる。殺し合いの戦国時代を、従来のように描くのは厳しいですね。

2023.01.29(日)
文=古沢良太、有働由美子